思春期真っ只中。片想いも充実してる。
友達だってある程度つくってて、切なさに負けないくらい幸せもつくってて。
全てが大切。私だけの感情。
そんな、ある時

「この4つのマークに順位つけてみて」

不意にトランプのマークが視界に広がる。
ハート ダイヤ クローバー スペード。ありきたりな、古臭いようで新鮮さがあるような不思議なマーク。
何故、と問いかけてみても少しにやけているのに目は真剣な怪しい友人。
あまりにも急かす根気に負けて、適当に悩みながら順位をつけた。
嫌な予感は重々してた。その企みに乗ったのは、ただの気まぐれ。

「クローバーが一番。二番ハート。ダイヤが三番。あとは…スペード」

友人を仰ぎ見ると「ふむふむ なるほど…ていうかコレなんだっけ…!」などと一人でぶつぶつとぼやいていた。 

「で、何なの?コレ」

つんつん、と指でつついてこっちを見た友人に訊いた。
いつのまにか集まってきた知り合い達と戯れ囲まれながら答えた友人の言葉に、やっぱりか、と肩を落とした。

「自分が大切にしてるものの順位!えっとね、あんたの場合は…友情が一番で、恋愛がその次。三番が金。四番は忘れちった!」

えへ、と笑う姿を半眼で見つめ、ふーんと冷たい返事を返した。
私が心理テスト嫌いなのは周知だ。ごめんごめんと苦笑いを浮かべる友人。
ほっぺをつまんで、のびるところまでのばしてやった。
四番がなんなのか少しだけ気になるが、訊く気にもなれなくてしっしっと追い払った。
頬を膨らましながらしぶしぶ遠のいていく姿を目を閉じて視界から追い出すと、いろいろな人の顔が頭に浮かんだ。
私が一番大切にしているのはホントに友情なのか。

「だから心理テストは嫌いなんだ・・」

うーっと唸って机に突っ伏した。何事も重く受け止めがちな私にとって、たやすく倒せる敵ではない。
心理テストというやつは。薄目を開いて教室の中を見渡す。
さっそくさっきの心理テストを手当たり次第にやりまくる友人。
次の授業の小テストの勉強をする知人。
鞄の中に入ってる547円の全財産。
そして、某学習塾の問題集を眉をひそめながら解く男子生徒。
一番は何だ。大事なのは誰だ。
謎のスペード。四番目のものは靄の中。
心理テストと現実世界は矛盾だらけ。

「所詮、テストだもんね」

そうごまかして隠れるのはきっと、私の一番大切なもの。


なにがだれ

(隠れてないで出ておいで)