「苗字っち、おはようっス!このテストが終わったら部活動っスけど勉強のほうはどうっスか?」 「う、うーん…ぼちぼち、かな?早く部活したいね」 朝、黄瀬君と挨拶をする。もうこれが日常となっている。 もうテスト1週間前でテスト勉強も終盤だ。 黄瀬君はテストのことよりもテストが終わった後のバスケの事を考えてるみたい。 さすがだなぁ、私なんか目の前のテスト勉強のことだけで頭がいっぱいなのに。 軽く話して自分の席に着くと久々に聞きなれた声が聞こえた。 「ちょっとちょっと名前、これはどういうこと!?」 「あ、ちーちゃん久し振り」 この間から学校を長らく休んでいたちーちゃんは懸賞で当てた家族旅行の真っ最中で、久し振りに帰ってきたちーちゃんはどことなく新鮮だ。 「何時の間に黄瀬君と仲良く喋れるようになったのよ?!」 あーっ私が居ない間に何があったのー!と叫ぶちーちゃんに、私は「色々?」としか答えられない。今ちーちゃんに説明するのはとっても勇気がいるのでまた後でにしよう。 ちーちゃんがお土産に買ってきた世界のお菓子をもぐもぐと食べていると紫原君がこっちをじーっと見ているのが分かった。 「ねぇちーちゃん、これ紫原君にあげてもいい?」 「え?別にいいけど…」 了承をもらった私はてくてくと紫原君に近づいてちーちゃんから貰ったお菓子を少しだけ分けてあげるとぱっと目を輝かせた。 「名前ちんいいの?」「うん。お礼ならちーちゃんに言って」「ちはちんありがとう!」「え、あ、うん」紫原君の迫力にちーちゃんもタジタジだ。もっといる?と言って差し出すちーちゃんに紫原君が抱きついた!「ありがとうちはちん大好き!」に顔を真っ赤にして固まっている。そうしてちーちゃんは大人しくなった。 「あ、青峰君。」 「ん?なんだ苗字じゃねぇか」 教室へ行く途中青峰君とすれ違ったので声を掛けると隣にいたちーちゃんが『誰に話しかけてんのってかやばいよコレ!』と目で訴えている。青峰君は体格が良くて色黒で目が鋭いし怖いよね。普通見たら怯えると思う。ていうか私がそうだったし。 「青峰君どこ行くの?もう授業始まるよ?」 「あぁ?んなの関係ねぇよ。サボリだ、サボリ」 じゃあな、と青峰君は行ってしまう。授業受けなくて平気なのかなぁ?だってテスト前の授業ってテストで出るポイントとか教えてもらうのに…そういえば青峰君って頭いいのかな?…うーん、あんま想像できないな……。 「はぁ?!バスケ部のマネージャーになったぁっ?!」 「う、うん」 放課後、人が居なくなったから今までの事をちーちゃんに切り出すと、途中からすっかり大人しくなっていたちーちゃんは瞬く間にいつものちーちゃんに戻ってしまった。 「ドジでノロマで運動音痴なアンタがバスケをするようになって、そこから黄瀬君とつながり、さらにバスケ部のマネージャー?!」 大声量が教室に響き渡る。良かった、人が居なくて。 大声で叫んだ後、ないないない、と首を振るちーちゃん。 思ったけどちーちゃんも何気に青峰君と同じくらい平気でヒドイこと言うよね… ちーちゃんは信じられないとなんども、名前がバスケ部、がバスケ部、あのドジでノロマなが…とうわごとのように呟いている。 そうしてテストが終わり、 「ちーちゃん、テストどうだった?」 「帰ってきた早々アンタのすご話聞かされて、テスト勉強なんてろくに頭に入んなかったわよ……」 机にぐったりと倒れこんでいるちーちゃん。 「アンタはこれから初めての部活?」 「うん」 「そう」 「頑張りなさいよ。」 あれだけ私の事を散々言ってくれたちーちゃんも最後は納得してくれたようだ。 「アンタ、変わったわね。(前は引っ込み思案で私意外とはあんまり喋らなかったのに)」「え、どこが?」「…ううん、なんでもない。」 「苗字っち〜!」 「ほら、早く行きなさいよ。」「あ、うん。それじゃあ行くね。」 「いってきますっ!」 キミからはじまるキセキ! (そうして私はキセキが待つ場所に1歩を踏み出した) 〔back〕 |