“芸術家”な子



美術館に行ってから、リサはよく絵を描くようになった。
そんなリサにクレヨンを買ってやると大喜びしギャリーの横で一緒に絵を描くようになったが
ある日、事件は起きた。

もう少しで完成するというところまで描きあげた水彩画にクレヨンで描かれたラクガキ
勿論アタシはそんなことをしていない。
キャンパスに色とりどりでぐりぐりと押さえつけられた用に書かれたラクガキの犯人は1人しかいない。

「リサっ ちょっとこっちに来なさいっ!」

名前を呼ばれたこのラクガキの犯人は出てくると彼のキャンパスを見てなにやら自慢げだ。

「えへへ、かわいーでしょっ」

「そうじゃないでしょ!
 人のキャンパスに勝手にお絵かきしちゃ駄目じゃないっ」

どうやらこの子はいい仕事をしたと思ったらしく
褒められると思っていたはずが怒られることに不満気だ。

「むぅー……」

「不貞腐れてもダメ。ちゃんと謝りなさいっ」

内心もう少しで完成だった自分の作品がパァになりテンションがさがるさがる。

「ごめんなさぁい…」

表情が暗くなっていくギャリーにやっと自分のしたことのまずさが分かったのかリサは目に涙をためていた。

子供だし、ちゃんと言わなかったアタシも悪いわよね…
もう、気持ちを切り替えなきゃ。

「あぁ、もう怒ってないから。涙を拭きなさい」

そうやって頭を撫でてやるもリサの表情はまだ不安げだ。

「ほら、おやつ買ってきたのよ。食べましょう」

絵なんてまた描けばいい。
いくらでも時間はあるのだから。



「そういえばアレ、何を描いたの?」

「おはなさんー」

「あぁ、お花ね」

ギャリーが描いていた絵は人物画で
風景画を描くことが多いギャリーが人物画を描くことは珍しい。
そのモデルは我が家にやってきた小さな女の子。
結局その子の手によって駄目にされてしまったけど。

そういえばクレヨンで描かれた様々な色はちょうど髪を囲うように塗られていたっけ。
ということはあれは花飾りだったのかしら。
なるほどね

もう駄目だと思っていたさっきのキャンパスを持ってくる。
髪の部分だけまだ色が入っていない。
クレヨンで書かれた花飾りに重ならないよう慎重にその部分に色をつけていく。


「よし、完成。」

ほら、とその絵をリサに手渡すとすぐにモデルが誰なのか分かったようだ。
目を輝かせ嬉々とした表情でアタシに向かいこう言った

「ありがとうギャリーっ!」

キャンパスに水彩で書かれた女の子はこちらを向いて幸せそうに笑っていてクレヨンで描かれた花飾りが素敵
それを持っている女の子も絵に負けないくらいの笑顔で


アンタのセンスも中々よ。
アタシだけじゃここまで幸せそうに描けなかったわ。


(きっと将来は芸術家)


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