“残された”子



小さな女の子、リサが家に来た理由は大学時代の旧友に半ば押し付けるという感じで預けられたからだ。



「冗談じゃねえよ、何で俺が…」

「頼むよ、もうお前しかいないんだって」

正直冗談じゃないと思った。
学生時代、どこか人と違うように見られた自分は
友達はあまり作らずほとんど一匹狼のような感じであまり人と多く関わろうとしなかった。
それを知っている彼が自分に頼むのがまずおかしい、明らかに人選ミス。
そして勿論俺もお断りだ。

そんな感じでさっきから一対一の口論が続いている。
それを止めたのは旧友の後ろから聞こえた小さな子供の声だった。


「パパ、この人だぁれ?」

「あぁ、これからリサがお世話になる人だよ」

「おい、お前…っ」

「じゃ後は頼んだからっ!」

そう言い残した旧友は子供を置いてさっさと逃げ帰ってしまう。
ポツンと残された俺と小さな子供、リサに呆然。
とにかくこの子供をこのまま外に居るわけにもいかないので家の中に入れるしかない。



正面に向かい合わせ、そして何故かお互い正座。
小さな女の子は口を開かずこちらをじっと見つめていた。
続く無言に耐え切れないギャリーは何かを言おうと必死だ。

「えーっと、リサ…ちゃん?」

名前を呼ばれた彼女はこくんと頷き、
いつの間にか手に持っていた紙を差し出してきたので受け取った。


(あら?アイツこんな苗字だったかしら)

そこには彼女の名前と年齢、簡単なプロフィールにアレルギーや健康方面の事が書かれていた。

その子はお世話になる人に家に入れてもらったら渡すようにと言われたらしく
まるでこうなることを予測していたような書き出しのメモだった。

試しにこの子を置いていった旧友に電話をしてみるも繋がらない。
まさかの事態に家に入れなきゃ良かったという後悔と
これって育児放棄じゃないのかと頭の隅で思ったが
この時は何日かすれば迎えに来るだろうと思っていた。


夜になっても自分の親が迎えないことに残された子供は大泣きした。

「うわ゛ぁーん!パパぁ゛ー ママぁ゛〜っ!!」

この子にはちゃんとよく話さなかったのだろう
多分お世話になるとしか言われてないのか、もし預かられるということを聞いたとしても
それは1日の内の数時間などと思っていたのかもしれなかった。

「あー、よしよし〜っ」

子供のお守りなんて人生初でどんな風にすればいいのか分からない。
とにかく泣き止ませようと必死で色んなことをしてみたが泣き声は大きくなるばかり。
そんなときある事に気付いた。

それはこの子がパパよりママを呼ぶ回数が多い
つまりママっ子ということだった。

ママのように女口調であやしてみる
すると子供がなんとか泣き止み
泣きつかれたのかこてりと寝てしまった。

なんだか初日からすっごく疲れた気分だ。
毛布をとってきて子供の上から掛けてやる。
すやすやと眠る小さな子供の目には涙の後が痛々しく残っている。

この子も可哀そうに。

そして早くこの子の迎えがくることへの願いと同時に明日への不安を抱えながら自分も隣で眠りについた。


そうしてギャリーと子供の長い同居生活が始まりを迎え、

数日経ってもこの子の迎えが現れることはなかった。

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