“恐ろしい”子



「ぎゃりーぎゃりーっ」

「ん?どうしたの?」

「ここ、いきたいっ!」

ある晴れた日の朝。2人とも家でゴロゴロしている。
今日はどうしようかと頭の中で考えていたら急にリサがテレビを見て指差した。
そこにはニュースキャスターのお姉さんとある美術館が映し出せれているところで、どこか見覚えのある景色。
あれ、ちょっと待って此処って…



「ね、ねぇ、やっぱり美術館はまた今度にしない?
 ほら、動物園とかっ!ウサギさんとか好きでしょ?」

「びじゅつかんがいいの〜っ」

「それだったらせめてここの美術館じゃなくて違う美術館に…」

「やっ!おさかなさんみるのーっ!」

この子はいつから美術館なんてものに興味を示すようになったのか。
普通ならこの子の成長だと思って喜べるはずなのに今のアタシにはこの意地っ張りが恨めしくしかないわ、ホント…

何度も美術館でははしゃがないように言い聞かせたのに駆け足でアタシを置いてずんずんと進んでいくリサに呆れる。
今日は人が少なくて良かった。そうじゃないとお転婆なこの子は誰かにぶつかっていただろう。
こんな動き回るんだからきっと見失っていたかも。
目を放さないように注意して付いていき、リサが立ち止まった先は床に飾られた大きな魚の絵、『深海の世』
きらきらと目を輝かせるリサだけど、その小さな体では全体がよく見えてなさそうなので肩車して上に持ち上げてやる。

「おっきいーっ
 ぎゃりーよりもおっきい?」

「そりゃあアタシよりもこのお魚さんの方が大きいでしょ」

「じゃあぎゃりーは ぱくって食べられちゃうね」

「……ちょっとそれは洒落にならないわ」

ありそうで怖い。

おっきいだの食べたいだの言ってるリサにちょっと和む。
子供の芸術の見方なんてやっぱそんなもんよね。

リサは肩から降りるとまた駆け足でどこかへ行ってしまう。

なんなのかしら、あの子見てるとあの悪夢も少しは忘れそうね。

にしても今度はどこ行っちゃったのかしら
目を離さないように気をつけるんじゃなかったの、アタシ

そんなときにトントンと後ろを叩かれ振り向いたら
目の前に飛び出す無個性。

「きゃーっ!!」

「ぎゃりー、びっくりしたっ? あははっ」

「ちょ、悪い悪戯はやめなさいよ…」

「?」

トラウマなのよ、もう……

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