“お転婆”な子



「ぎゃりー、ぎゃりー」

腕をいっぱいに広げて自分を呼ぶ存在にアタシは背を屈めて目を合わせた後、
脇に手を入れて上に高く持ち上げた。

「ほら、たかいたかーいっ」

きゃっきゃっと喜ぶ小さな子どもに自然と自分も微笑んでしまう。

小さい子を見てるとなんだか癒されるわよね
これが子供から放たれる天使のオーラってやつなのかしら。


「あ、痛っ」

そんな風にほのぼのしてたら頭に急に痛みが走って
見るとリサがアタシの髪を掴んで引っ張って遊んでいる。

「ちょ、痛いからやめなさいってっ」

「わかめ、わかめーっ」

「ワカメじゃないわよっ、ちゃんとした髪の毛なのっ!」

どうやらリサはこれが偉く気に入ったのか中々離さずに引っ張って遊んでいる。

あぁもう、仕方が無いわね……

とりあえず一旦この子を地面に下ろして
その子の気が済むまでアタシはその行為を案じて受けることにする。



「あーもう、そんなお転婆じゃ素敵なレディになれないわよ?」

やっと髪が離された部分に手を当てる。
あぁ、もう引っ張りすぎよ。
じんじんするじゃない…

「れでぃ、?」

そんなアタシの状況を全く悪びれもせず、ケロっと反応するリサに
アタシはすっごく大切ですというように凄みをもって言い聞かせる。

「そう。もっとおしとやかで礼儀正しくないと嫁の貰い相手がいなくなるわよ?」

「うー…?」

目頭をよせて唸るあたり、まだちゃんと理解できていないようだ。

「あら、まだリサには難しい話だったわね」

リサは馬鹿にされたと思ったのか見る見るうちに頬が膨らんでいく。
あら、可愛い。
なんだかフグみたいね。

「わたし、レディーになるもんっ!」

「あらあら、そんな誰にでもなれるようなものじゃないのよ?」

「なるもんっ!
 んでんで、ギャリーをよめ?にもらうもん!」

あら、嫁ってリサが貰われる立場なのよ?
アタシが嫁になってどうするのよ
アタシ仮にも男なんだけど。




「ぎゃりー」

「ん、どうしたの?」

「わかめ食べたい」

「お馬鹿。これは食べ物じゃないの」


そういった彼女の視線はアタシの頭の上にあって
一瞬自分を見て言われたからどきっとした。
だけどアタシの頭をキラキラした瞳でじっと見て おいしそう…とヨダレを垂らすリサには苦笑いするしかない。


これはきっと将来大物になるわね……

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