彼女との再会



「りさちゃーん、ズコットすぐでるかしらーっ」

「はい、ただいまーっ!」

おばあさんの呼び声のすぐ後に鳴ったオーブンのタイマーを消し出来上がったばかりの熱々のズコットを取り出す。
うん、今日もおいしそう!

「いらっしゃいませー、只今ズコット焼きあがりましたっ」

ズコットが並んだ鉄板を持ってカウンターで待っていただろう3人家族のお客さんに挨拶をする。

「! リサ、さん…?」

突然名前を呼ばれて、見ると目を見開いて吃驚した様子の彼女がいた。
見覚えがあった。あの綺麗な茶髪、赤い目。声も聞き覚えのある…そう、これは……

「イヴ…っ?!」

思わず持っていた鉄板を落としそうになった。
私の目の前にいるのは、あの美術館で一緒に不思議な探検をした内の1人。
当時は9歳で背の低かった少女が大きくなって私の前に立っていた。

久しぶりの再会をした2人は抱き合って喜び合った。
まだ皆ではないけれど、自分がこの店に入った当初の夢がかなったことに感動で打ち震えた。
イヴにだけでもまたこうして会えるとは思わなかった。
本当に、良かった…


あの後休憩を貰い、イヴは家族と別れ2人で席に座って話した。
この前来たあの気品ある夫婦はどうやらイヴの家族だったらしい。
そういえば場所が場所であまり気にする余裕が無かったけど美術館の時のイヴもどこか上品でお嬢様のような服装をしてるってギャリーと話してたっけ。


「あれから3年……いえ、もう4年近く経つんですね。」

そう言って紅茶を啜る彼女はもう少女ではなく女性とした振る舞いだった。

「イヴは変わったね。大きくなったしすごく大人びて…もう少女とは言えないね。今は中学1年だっけ?」


「はい。リサさんも…変わりましたね。」

「そうかな?」

「えぇ、背は伸びていませんけど。」

「うわ、人が気にしていることをっ。もう成長期は終わったんですーっ」

「ふふ、そういうとこは変わってないですね。」

「相変わらず子供っぽいで結構。永遠に若くいたいんですっ
 …もうっ、じゃあどこが変わったように見えるのよ?」

「目…ですね」

「目?」

「前も輝いてたんですけど、今はもっとキラキラ輝いているように見えます。」

なんだか夢に向かって頑張るような…
そう言って彼女は私をじっと見て、なにかあったんですか?と聞く。

「イヴとギャリーのお陰だよ…」

彼らが居たから今の私は此処にいる。
あの美術館での出来事が無かったら今頃此処には居ないだろうし、ここで働いてることも無かっただろうから。


「そういえば、イヴはギャリーについて何か知ってる?」

「ギャリーさんがどうかしたんですか?」

ギャリーと連絡が取れなくなったのはイヴが引っ越した後だったしイヴは彼のことについて何も知らないようだった。

「そうだったんですか…。ギャリーさん今頃どこにいるんですかね…」

私の携帯に使われなくなった彼の携帯番号がまだ残ってあった。
もう繋がらないと分かっていても消せずに残ってあるアドレス。

「そういえばイヴは今携帯とか持ってたりする?」

「はいっ、アドレス交換してもいいですか?」

「当たり前でしょっ、ほら携帯携帯っ」

可愛いウサギのストラップが付いたイヴの携帯と私の携帯を合わせて赤外線。
画面にイヴと書かれたアドレスが表示された。

「これで良し。誰かさんみたいに行き成り連絡付かないとかやめてよねっ」

そろそろ戻らなくちゃと席を立つと、イヴが夜になったら電話すると言ったから夜が待ち遠しかった。

とりあえず先にイヴにメールで敬語禁止と送っておこうと思う。

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