爽やかになって



「違う、これじゃ甘すぎ。フルーツで結構出てるから砂糖はもう少し控えめにして…」

あーでもないこうでもないと机にうつ伏せになって唸っている。
考えているのは新作のケーキ。
夏に向けてアイデアを出すことになったけれどレシピを考えるなんて初めてで試しに作ってみたものの味のバランスが合わない。

「うーん、やっぱクリームが重いんだよねもっと軽く…
 それに清涼感を出したいんだけど…」

作れたものは自分が考えていた夏に涼しさを感じるようなケーキではなく
甘いフルーツと生クリームが合わさった唯の甘いケーキだった。

はぁ、と一つ溜息。
やっぱり私には荷が重すぎたのだろうか。
アイデアだから分量だとかそこまで考えなくともおじいさん達に見せれば良いのかもしれない。
でもやっぱり最大限自分でできるところまでやりたかった。



「ただいまー…」

「あら、おかえりなさい」

家に帰っても頭の中はケーキのことで一杯だった。

「ご飯はどうする?」

「いらない、食欲ない」

「またそんなこと言って…」

私は何も言ってないから事情を知らないお母さんは最近私が変なのを心配しているようだ。
リビングにいたお母さんに言葉だけ返し、階段を上ってそのまま自分の部屋に向かった。


「ふぅ…」

荷物を放り投げてベッドに身を投げ、私の体重を吸収してベッドのスプリングが軋む。
今日はもう疲れた気分だ。
レシピを早く完成させなくちゃという頭の中とは裏腹に瞼は重く下がっていく。


次に目を開けたのはそれから3時間経った後だった。
レシピを考えなくてはと重い体を起こし机へと向かった。

「あれ?」

レシピの案でぐちゃぐちゃに散らばっていた机の上は整理され1つに纏められて机の脇に置かれていた。
真ん中にはラップを掛けられたうどんが置いてあった。

“頑張れ”
と、上にメッセージが乗せられているということはお母さんも察しが付いたのだろう。

ラップを剥がし箸を取ろうとすると手に何かがぶつかる。
正体はお椀の下に隠れて見えなくなっていた酢橘だった。
酢橘を絞った冷やしうどんはサッパリしててのど越しが良く爽快感があった。
食欲が無かったのも忘れ、なんだか頭もスッキリした気がする。
そうしたらアイデアが出てきた。

(クリームに酢橘…いや、ライムを摩り下ろして入れるといいかも。
 ううん、ここはクリームじゃなくてメレンゲにしてあとはクリームの乳脂肪分を落とせば…)


「できた!」




「リサちゃん、レシピのほうはどうなったかい?」

「はい、できました!」

おじいさんに自信を持ってレシピを差し出す私は達成感に包まれて

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