気品に溢れた人



見慣れないお客さんが来た。

「いらっしゃいませっ!」

2人の男性と女性は服から雰囲気までどこか気品が溢れていてどこかのお金持ちの人だろうか。

ショーケースをざっと見た2人はイートインを希望したので私は2人を席まで案内し、お求めのケーキと紅茶を運んだ。

「お2人は遠方から来られたんですか?」

「えぇ、元々こっちに住んでいたのだけど仕事の転勤で離れて、またここに帰ってきたの。」
 子供がね、またここに住みたい、っていって
 普段から大人しいあの子が珍しく強情にお願いをしてきたから」

負けちゃってね、と女性―お母さんは仕方なさそうに微笑んだが子供の自主性が見れて嬉しかったようだ。

「へぇ、そうなんですか。
 じゃあその子もお2人にはとっても感謝しているでしょうね」

自分もあまり強い言い方とかができなくって…
そういう人って人に言えずに結構溜め込んじゃっている人が多いんですよ。
だからやっと言えた自分の願いを聞いてくれた時はとっても嬉しくていえて良かったって思うようになるんです。

「あら、そうだったの。
 ふふ、まだ会ったことも無い人に知らないあの子の事を私よりも先に知られちゃったなんて。」

「あ、すいませんっ、」

「いいのよ。
 そうね、今度はあの子も連れて3人で来る事にするわ。」

だからまた、私に教えてね。と私にウインクして
その子をとっても愛しているのが伝わってきた。


「あぁ、もうこんな時間だ」

「あら、もう?じゃあそろそろ行かなくちゃね」

楽しくて時間を忘れちゃったわ

「ここのケーキ、すごく繊細でいて上品で美味しかったよ。」

「また食べに来るわ。」


「ありがとうございましたっ!」


帰っていった2人に私はなんだか懐かしい感情を抱いていた。
なんだろう、誰かに似ている。
初めて会ったのに初めてじゃないみたい。

心に引っかかった謎が解けるのはまだもう少し経ってから

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