あの日を夢見て



無事に絵画の中から出た私とイヴ、ギャリーの3人は
最初こそ週に何回か集まってギャリーのいうマカロンのおいしい店でお茶してお喋りをしてと楽しい時間を過ごしていたが
しだいに3人も成長し、中々時間が合うこともなくなった。
そしてついにはイヴは引越し、ギャリーとも連絡が取れなくなって、もう会うこともなくなってしまっていた。


あれから3年
私は今、あの頃3人でよく集まったあのお店の前に1人で立っている。

―どうしてもここで働きたいんですっ!
はい。はい…、 お願いします。


私は就活の時期になってもあの不思議な体験が忘れることができなかった。
もうこれから先ずっと会うことは無いのだろうか
皆が就職にあわただしく取り組み就職先が決まっていく中、そんなことを考えながら只ぼんやりと毎日を過ごしていた。

そして学校生活として最後の夏休みが終わろうとしていたとき友達に誘われケーキ屋へと向かった。
そうして到着したのは、昔あの不思議な体験を共にした仲間で集まったあのお店だった。


「ここのマカロン美味しくない?色んなバリエーションがあって可愛いよねー」
『ここのマカロン美味しいでしょ?色んなバリエーションがあって…
 ほら、このマカロン。貴方の薔薇と同じ色ね。
 リサに似て可愛いわ。』

ふいに涙が零れる。
友達の声と重なってギャリーの声が聞こえた気がした。


『あ、イヴの色の赤いマカロンがあるよ。』
『ほんとだ、可愛い。』
『ギャリーの青いマカロンはないけど』
『青って食欲を減衰させる色だからでしょ』
『えー、良いと思うんだけどなぁ』
『アンタ中心に考えてどうすんのよ』

『ちょっと、頬張りすぎよアンタっ!』
『えー、いいじゃない。だって美味しいんだもん…うっ!』
『言わんこっちゃない…』
『お姉さん、水水っ!』
『イヴ、ありがとうマジ天使。』


懐かしい思い出が溢れ出す。
そういえばあの時はそこのテーブルに座って皆で食べてお喋りしてそれから、


「ちょっとリサっ、何で泣いてるの?!大丈夫っ?」

「え、あ、うん。ちょっと思い出し泣き……ごめんね」


それから家に帰った私は決心した。
あのお店に就職したい。
あそこにいたら、ここならまたいつかまた皆が帰ってきてくれるかもしれない。

学校生活終わりまで残り半分。
それからの私はできることを全力でやり、勉強もがむしゃらに頑張った。
いつもテストでは平均をうろうろしていたのがいつの間やら上位に成り上がって
毎日ぼんやりしている私の未来を心配していつも口うるさく怒っていた父と母も何も言わなくなった。
毎日学校帰りにあのお店に通ってお菓子を買って帰るのが日課で、ショーケースの端から端までを食べつくした頃
ついに窓に製造兼販売スタッフ募集の求人の張り紙が張ってあった。


「本当ですかっ?有難うございますっ!よろしくお願いしますっ!」

そうして私は春からこのお店で働くことになった。

また皆が戻ってきてくれて、あの頃のように3人でマカロンを食べてお喋りするのを夢見て



「いらっしゃいませっ!」

私は今日もあの人を待っている。

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