溺れてしまえばいい






「でさ、彼がすっごくイケメンでさーもう人気がやばくて女子とかさー」

嫉妬の嵐なわけよ。

「はいはい、どうせそれで最後は結局別れたんでしょ」


あら、よくお分かりで。




「アンタ、そんな恋愛しててつまらなくないの?」

真剣に恋愛しようとか思ってないでしょ


「当たり前じゃん」

真剣に恋愛とか所詮一瞬の気の迷いみたいなものにそこまで熱心になったら最後は自分が馬鹿をみるだけじゃないか。

「そんな恋愛なんかで人生一生を棒に振るほど落ちぶれちゃいないですよー」

「てことはアンタは一生恋をしないってことになるわね」

アンタと付き合った彼氏も可哀想に
最初から相手にされてなかったなんて相手が聞いたらきっと泣くわね
とか言うけど
別にそんなの私が知ったこっちゃないですよ


「ねぇ、真剣に恋愛する気ないの?」

「相手次第ですね」

じゃあ相手はもう決まっているってこと?


「へぇー、じゃあアタシとかは?」

一拍置いて答える。

「本気の恋愛がオカマ口調の変人とだなんて なんて悲しい恋愛なんでしょうか」

「…… 随分と言ってくれるわね。」





「…ねぇ」

「なんですか」

「アタシと本気で付き合わない?」

「まだ言ってるんですか」

「俺と付き合おうよ」

絶対楽しませてあげるからさ


行き成り男口調に変えたギャリーにどきっとするけど顔には出さない、悟らせない。
大丈夫、表面上はしっかりと隠せてる。

「お断りです」

「どうして?」

「だって、」

「こんなに俺の事が好きなのに?」

行き成りの接近に頭がエラー
気付いたら顔がすぐ目の前に迫って言い寄られている。
と思ったら胸に手を当てられていて
ちょ、そこはさすがに制御とかできないのに

「ほら、心臓が鳴ってる。
 すごい音」

「この変、態…っ!」

相手の目を見て睨んでも全く気にしていない様子で
私を見下して余裕の表情だ。
なにコイツ、すっごいむかつく。

「ねぇ、俺の事好きなんでしょ」

じゃないと毎週わざわざこんなとこまで唯の世間話をするためにここに来ているなんて
そんな訳、ないだろう?
それに最初の質問、否定してない。

「自惚れもいい加減に…っ」


しろ、と続けようと思ったが声が出ない。
その先を言わせないつもりなのか行き成り塞がれた口
口と口が重なっていて ねっとりとした生温い感覚が脳内を麻痺させる。


「……はっ、」

長い長い口付けでやっと離された時には脳は酸欠状態。
なんだったんだ、今の

「ふふ、顔が真っ赤よ」

「う、うるさい…っ!」


あぁ、もうなんなの
冗談?本気?どっち?



「アタシに溺れてればいいのよ」

……溺れるか、馬鹿。




bark