逃走ラビット /γ (RE)













「そんなにここから出たいか?」

「―― ・・・ 。」








私は1週間前にミルフィオーレに捕らえられ、ボス――白蘭の下に連れて行かれた。
きっとその場で殺されなかったのは、私がボンゴレの者だから。
私がミルフィオーレのボスの下へ連れられたとき、丁度ブラックスペルの男が任務報告をしているのが目に入った。
報告をし終わった後、やっと私に気づいた黒い影。
その男は目を細め、私のことを上から下まで見つめる。
正面から見たらその男が誰なのかを知る。

(電光のγ・・・っ!!)



「その子がボンゴレの子?」

電光のγの後ろにいるもう一つの白い影から声が発せられた。

「そのようです。早速拷問してボンゴレの情報を聞き出しますか?」

「ん、そうしt「白蘭、この子にあの拷問は酷すぎる。

俺に預からせてくれないか――?」

ほら、ちびっこいじゃないかと、彼は手を腰より少し上の位置に上げながら、自分の言葉の意を示した。




「どうするつもり――?」

ボス、白蘭は目を細め、黒の男に話しかける。
その低い声にかけられた重い言葉に、私は身震いをする。
γはその声に身震いすることなく平然とこう言ってのけた。


 ――― ちょっとそのお嬢ちゃんが気に入っただけさ、
    なぁに、ちゃんと情報は聞き出すさ  ――― ・・・と。




意外なことに白蘭は許可を出した。
こうして私はブラックスペル、電光のγに預けられた。



その男に預けられてからの生活は思ったより悲惨なものでは無かった。
監禁はされたものの、檻ではなく、電光のγの部屋らしい。
鎖も無い。ただ、γがいない間、鍵だけは掛けられ、
その扉は硬く、閉ざされていた。



そしてこの一週間。
なにも私から聞きだそうともしていない。


――どういうつもりだろうか。






「なぁ名前、そんなにここから出たいのか?」

「愚問よ。」

「そうか――。」




「なら一つゲームをしないか?」

「?」



「お前が此処から俺に捕まらずに出れたら
      お前は自由の身だ。  」


私は目を見開いて彼を見た。



「正気――?」

「ああ。その代わりお前がもし捕まったら ダンマリはやめてくれ。
 無口は無口でいいが、一人で一方的に話してる身はつらいんでね。」


―― 好きでそうなったんじゃない!!

彼を一睨みした後、私は彼の発言をこれでもかと頭の中で繰り返した。
忘れそうだったわけじゃない。ただ、信じられなかった。

彼の言葉にはボンゴレの情報を吐くという意味は含まれていなかった。

少なくとも今は。



「ボスに怒られるよ?」

「そうだな。」

「貴方には何のメリットも無いのよ?」

「いや、あるさ。」


もしボンゴレの情報が欲しいのなら、こんなゲームをしなくても、ここに捕らわれた時点で拷問をすればいい。私はそれを止める権利が無いのだから。
元々あの時、この男の言葉が無ければ
今頃私は吐いたか、吐かずに死ぬか。
いや、もし吐いたとしても死んでいただろうか。

今も前も同じだ。
彼はいつものような人を馬鹿にしているようにしかめたままの眉をこちらに向けて、こっちを見ている。

彼の考えが掴めない。


「―― 正気?」


私はもう一度聞いた。




「どうだ?やるのか?」

彼は私の質問には答えない。
彼自身分かっているはずだ。
それとも逃がしてくれるのだろうか、
その可能性は限りなくゼロに近いけれど。

彼は答えなかった。
私の質問に。



もしかしたら此処から出れる最後のチャンスかもしれない。


「やる。」



部屋の主がいる間、扉は役を失い、扉は開いていて
私はここから出ようと、座っていたベットから身を離して扉へ向かった。



「待て。」

彼に呼ばれて振り返った際、何かを投げ渡され、両手で掴む。

渡されたものはリングと匣だった。


「仮に出れたとしてもそれが無いと嫌だろう?」

本気でこの男は私を捕まえる気なのだろうか。


「いいの?」


「ああ。逃げられるもんなら逃げてみな、
    この俺からな―――。」

「私はここから出る。」


そう言って私はこの部屋から抜け出した。





「お前を手放すつもりは無いさ。」

 
――― GAMEスタートだ。





逃走
(早く帰りたい。)(彼とはもっと別の形で会いたかったのかもしれない。)




bark