里志(氷菓)






「空ってどうして青いのかな」
「いきなりどうしたんだい?名前」
「ううん、何となく。ねぇ、里志教えてよ」
「君はどう思うんだい?」
「うわ、質問を質問で返さないでよ」
「まぁまぁ、キミの意見が聞きたいんだ」
「……宇宙の蒼を薄めて?とか、それとも海の色が空に反射して、とか?」
「ふふ、キミらしいね」
「なんか馬鹿にされてる気がする」
「まさか、馬鹿になんかしてないよ。寧ろ褒め言葉として受け取って良い」
「……で、実際はどうなのさ」

「空は……」


「さすが自称データベース、理論的。」
「キミは夢見がちなロマンティックだね」
「うっさい」

でもさ、そんな考え方してたらいつか息詰まっちゃわない?

うん、そうだね。
だからキミが羨ましいよ。


「学校終わったらさ、アイス買いに行こうよ」
この空をバックにしてさ、チーちゃんもマーちゃんもホータローも連れて皆で食べよう?


君の顔に暗い影が差すのを最近よく目にしてちょっと心配。ううん、本当はすごく。
里志にだって才能があるよって言いたいけどそれはきっと慰めにしかならないから言わない。
だから私は無知な振りをして彼の気が紛れるならと思って、いつも突拍子にどうでも良いことを呟いた。
私はこの時、自分が馬鹿で本当に良かったと思ってる。


屋上で見る夏の空は雲一つなく清々しいほどに青く映っている。
蝉の鳴き声が頭にノイズとして響いて世界が灰色になってしまうのが怖かった。


(何にも考えたくない)
(青く染まれ)



bark