悪魔の手助け



「ねぇ、ギャリー…」

思わず声が震える。
彼の息を呑む音が聞こえた。

「ちょ、ちょっと…」

緊張した彼の声
まさかもう気付かれた?

私を指差す彼の手は震えている。
私?違う私じゃない、私の後ろだ。

振り返るとそこには青い人形が命を持っているかのように自分の足で立っていた。
その手には絵の具の玉。
ギャリーが持っているのと同じものだ。

青い人形は不気味な声で私たちを笑っている
誘っているようにも感じた


「それを、渡しなさいっ!」

ギャリーは絵の具の玉を奪おうとするが人形のほうが素早く逃げ出し、ギャリーもそれを追いかける。

「ま、待ってっ!」

先ほどまで開いていなかった部屋の扉の隙間から人形が逃げ込み、ギャリーもそこに飛び込んだ。
勢いよく開けられた扉は反動して閉まる。
私も追いかけて部屋に入ろうと扉を開けようとしたら、一度閉められた扉はロックされて入ることできなくなっていた。
扉を叩いて叫ぶも全く聞こえていないようで何も返事が無い。
扉の前で立ち尽くす。

ギャリーは秘密を知ってしまった。
このまま放っておくことはできない、
どうすればいい、
殺す?閉じ込める?
閉じ込めるなんていつまでだ。結局最後は死んでしまう

『記憶を消せばいいじゃないか』

「!?」

突然の声に驚く。
いつのまにか背後にはまた別の青い人形が立っていてこちらを見上げていた。

「…どういうこと?」

『そんなパレットナイフを使って物騒なことをしなくても記憶を消せば元通りいられるってこと』

思っても見ない方法だった

「そんなことできるの?」

『完全に記憶を消すには時間が掛かるけど刺激を与えなきゃ大丈夫さ』

どうやら人形が言うには記憶を消してすぐにショックを与えると記憶が戻ることがあるらしい。



「まさかアンタに助けられるとは思わなかった。
 流石といったところかしら、この悪魔。」

『酷い言い草だな。僕が君に何かしたかい?』

「初めて私がここに来たときに色々と。
 正直トラウマよ。」

『それは僕じゃない。他の人形達だろう』

「アナタの仲間じゃない。
 それにメアリーが最初に私に紹介をしたのはアンタ。
 その時は普通の人形と変わらないと思ってたけど
 メアリーがいなくなってから初めて口を開いたアンタのその相手を挑発するかのような言葉遣いに初めっから気に食わなかったの」

『それはどうも』

「…でもまぁ、ありがとう」

自分で人を手にかけることは怖かった。
でもアンタのおかげで手を血に染めずに済んだから



「……なんでついてくるのよ」

『別にいいだろう。
 それとももうさっきの恩を忘れたのかい?』

ギャリーの記憶が消えるまですることがない私はあの人形に言われ一度自分の部屋に戻り
私は机の引き出しから目的の“モノ”を手に取った。
こうなった以上またもしもの事がないとは考えにくい、それの対策としてこれが必要になるかもしれない。

戻りの道で悪魔は言う。

『さっきの事だけど』

「なに?」

『君があのまま中に入って
 震えながら彼を殺すのも良かったんじゃないかと思ってね』

「悪魔。」

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