最悪のシナリオ



戻った先にはイヴが1人だけだった。

「イヴ、ギャリーはっ?」

「さっきいた部屋を調べてくるって…」

帰ってこないの。

どうすればいいか分からずイヴはギャリーの言うとおりここで私達が戻ってくるのを待っていたという。
ギャリーの帰りが遅いことにイヴは心配していた。

「探しに行こう。」


人形の部屋はもぬけの殻でギャリーはいない。
だけど左端にさっきまで見えてなかった、本棚がずれて姿を現した大きな穴にメアリーの顔が強ばった。

「メアリー?どうしたの」

メアリーの様子に気付いたイヴが問いかける。

「メアリーさっきから具合が悪いみたいなの。
 私はこの先を見てくるからイヴはメアリーを見てて」

適当に嘘をでっち上げ私はすぐ穴の中へ入った。
後ろで焦ったイヴの声が聞こえたけどしらんぷり
メアリー、イヴをおさえといてね

この穴はあの本棚の部屋と繋がっている
ギャリーはどこまで行っただろうか

もしギャリーがあの本棚に近づくことを阻止できなかったら


もしメアリーの正体が知られてしまったその時は ――
さっきのお部屋、2人でメアリーとしたもしものお話が頭をよぎる


「ねぇ、もしメアリーの正体が皆に打ち明ける前にばれてしまったとしたらどうする?」

きっと私たちの話なんて聞いてくれない、離れちゃって逃げちゃう

「このパレットナイフでグサ、とか?」

メアリーは傍にあったダンボール箱の中からパレットナイフを取り出してマネをしながらそんな怖いことを言い出したので
私はメアリーからパレットナイフを取り上げ没収した。

「ちょっとそれ冗談にならないって、それじゃあ結局私達2人っきりで変わらないでしょ」

「えへへ、ごめん」

「もう…」


そのパレットナイフが私のカバンの中に入っている。


・・・

「ギャリー……」

「リサっ?! 無事だったのね!!」

本棚の部屋の前でギャリーを見つけた。
脂汗が伝う。

「ホント、アナタが無事で良かったわ…」

「うん、ギャリーも…」

再会に抱きしめ合いながら頭の中ではたった一つのことだけ。
この部屋に入るのを阻止できたの?できなかったの?
ギャリーの様子を注意深く見ながらそれしか考えられなかった。

「メアリーはどうしたの?」

きた。
彼の口から出た言葉に体が一瞬震える。

「メアリーは途中で具合が悪くなったからイヴと上で待ってるよ」

「イヴがっ?!」

尋常じゃない彼の反応

「大変、メアリーはゲルテナの作品だったのよ!
 イヴが危ないわ、早く助けに行かないと!」

彼の言葉は私の中に重く響いた。

彼はメアリーの秘密を知ってしまった
彼をイヴに会わせる訳には行かない



―もし知られてしまったその時は?


カバンに入っているパレットナイフがやけに重く感じる
布越しに伝わる金属の冷たさ
心臓が高鳴る
どくん、どくん


―そのときは

(ギャリーを殺すしかない )

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