世界の消失



あ、ギャリーだ。

私は彼を見つけて近寄った。
だけど中々距離が縮まらないのは何故?

ギャリーの視線は大きな絵画を捉えていた。

あ、だめ
それは、それは…

声を出して呼び止めようとするも声が出ない。
こんなに必死で叫んでいるのに言葉は空気中に溶けて消えて音が残らなかった。

彼の手が絵画に触れる。
すると手が絵の中に吸い込まれていった。

ふと、彼と目線が合った

行かないで、行かないで。

今にも泣き出しそうな顔は彼に伝わっただろうか

一瞬眉毛が下がった後にはもう私のことなど見えてないかのように視線を逸らし
更に絵画の中に腕までぐっと押し込んで
足を踏み出して一歩、

彼は絵画に吸い込まれるように私の前から姿を消した。

私はもうその場に立ち尽くすことしか出来なかった。


「私達も行くね」

そんな中、突然後ろから声が聞こえた。
振り返るとメアリーと誰かが一緒に並んでいて

メアリーの手には黒い薔薇。

私の…っ

「待ってっ!」

「新しいお友達が出来たからリサはもういらない。
 私、この子と外に出るから
 ばいばい。」


メアリーは隣にいる誰かと手を握って笑い合っていた。
誰かなのは黒い霧状で分からないけど、きっとメアリーが会いに行った年が近そうなあの子。
ねぇ、私達ずっと一緒に遊んできたのに、
メアリーは私よりも会ったばかりのその子を取るの?

2人の存在が遠くなっていく
もはや追いかける気力もなかった。


1人ぼっちになった世界は世界としての機能を果たさなくなっていく。
世界を構成する最小人数は2人からで、それ以下だとそれは自分以外に知らないということ。
その世界の証明が出来ないのならそれは何もないように、
その存在は消される。


私は段々自分の存在が消えていくのが分かった。
既に誰かを追いかけるための足は消えている。
そこから徐々に上に上がっていって、
腰、お腹、肩、遂には首まで。


こわい、こわい

どうしてこうなっちゃったの

ねぇ。


目の前が真っ暗。

[ 11/22 ]

[prev] [next]
back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -