焦り
とりあえずこの本をどうしようかと考え込む。
バックにしまって持ち出すのはこの後皆と合流するときのことを考えると危険だ。
かといってここに隠して置くだけでは見つかる可能性もあるし
「そっかっ」
それなら見れなくすればいいのだ。
リサは通路の端におかれた本棚をずらし通路の間に動かした。
「これで良し、っと。」
あともう一箇所、と気合を入れなおしたとき聞き耳のほうから音が聞こえてくるのが分かった。
「アタシ、ギャリーって言うの。」
「イヴ…」
「メアリー」
あ、3人が合流したんだ。
私も早くそっちに向かわなくちゃ。
力を振り絞り、もう一つの通路を塞いだ後、
リサは部屋から飛び出し、走った。
(ギャリーSide)
無我夢中で走った先で見つけたのはアタシが探していたのではなく
違う人だった。
「ねぇ、アンタ達。
自分より少し大きい位の女の子、見なかった?」
明るい緑の服をきてて髪は茶色いこれくらいの女の子なんだけど、
と聞いてみるも、どちらも首を横に振った。
ああ、もうどこに行っちゃったのよ
ギャリーは焦っていた。
――−
あの時、真っ暗な中リサが連れ去られて扉が少し開いた瞬間、ギャリーもそれに続いたがすぐに鍵が閉められ部屋から出られなくなり、彼女をすぐ追うことができなかった。
出られたのはそれから数分後のこと。
暗闇の中精神が削り取られていくのを感じながら、ポケットに手を入れると手のひらに冷たいものがあたる
ライターだった。
なぜ今まで忘れていたのかと唇を噛み
とりあえず周りに何か無いか探そうとライターを取り火を点けた瞬間
行き成り電気がつき、明るくなった部屋に眩しく目を瞑る。
目を開けた先には
「…………え?」
たすけて やめて こわい いやだ しにたくない「な……なによコレ………!」
部屋全体に囲まれるようにして書かれたラグガキに息を呑む。
体がぐらりと揺らいでしまいそうだった。
あぁ、もう駄目だ
嫌になる自分がいる。
そんな時、カチャリと鍵が開いた音がした。
目の前の扉がギギギっと音を立てて自然と開く。
嗚呼、駄目。此処で立ち止まっちゃ駄目じゃない。
リサ…、リサを探さなくちゃ。
アタシよりも怖い思いをしてる。
体に鞭を打ち部屋の外へ一歩と足を向け無我夢中で走った。
そうしてリサを探し走っていたら
さっきまで怯えていた自分が情けなくなって
諦めていようとした自分を恥じた。
ここで自分が諦めたら彼女はどうなるのか
そうして自分は走っていられる。
暗闇の中自分に助けを求める声が届いたのに助けられなかった自分が許せなかった。
――−
今頃、彼女はどうしているだろうか?
まさかもう死んでしまった?
「ギャリー…?」
気づくと赤い薔薇を持った女の子、イヴが
俯き無言だったアタシを心配そうに見上げていた。
「その子、どうしたの?」
「ん…アンタ達と会う前にもね、女の子といたのよ、もう1人」
連れ去られちゃったのよ、と力なく言うギャリーにイヴはかける言葉が見つからない。
「大丈夫。」
「メアリー?」
「きっとここを探してたらまた会えるよ」
ああ、そうね。
まだ死んだと決まったわけじゃない
なのに勝手に彼女を殺しちゃったら駄目よね。
「有難う、メアリー
イヴも。心配してくれてありがとうね」
あーあ、大の大人のアタシがこんな小さい子に慰められるなんてアタシ何やってんのかしら
待ってて、リサ必ずアンタを助け出してみせるから。
だから、
(生きてなさいよ、リサ ―― )
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