物欲



「はぁ、はぁ、はぁ…」

こんなに走ったのは何時振りだろう。

追いかけられていた色んな色の服の女達や無個性達をやっと巻いてその場に2人とも座り込んだ。

というかギャリーが私の腕を勝手に掴んで
ボーっとしてないで早く逃げるのよっ!
とかいいながら連れ回されてるんだけど

正直、そこまで体力ない私にはキツい。

最後の方は私が疲れているのを見て壁に回りこんで視界に入らなくなったときに追うのをやめてくれたんだろう。
ありがとう、皆。
私もここにきたときにすぐメアリーに会っていなければあんなことになっていたのかと思うとぞっとする。
今では皆友達なんだけどね。
にしても本当に疲れた。

さすがに廊下に座り込むのは不味いので何もないことを確認した小部屋に入って内側から鍵を閉める。


「少し、休憩しましょうか…」

ギャリーが座りこんだのを確認して私も一緒にその場に座り込んだ。


そういえばあれからメアリーはどうしているんだろう。
バックにつけたキーホルダーに目線を移す。
音漏れなどの防止のために付けられたフタ付きでロケットのようになっている。
私がメアリーに言って作ってもらったクレヨンで書かれた『聞き耳』と『告げ口』。
ここでは絵に書いたものが道具となったりする。
外の世界を知らないメアリーに私はヒントをあたえ、こういうものがあったら便利だと教えた
そうして作られた第一号がこのキーホルダーで携帯電話を元に考えたものだった。


私がバックにつけられたキーホルダーを見ているのを
ギャリーはバックを見ているのと思ったのか

そういえばそのバックって何が入っているの?と聞かれたので
私は水を使い果たして空になった細長い試験管のような瓶と
ボトルに入った薔薇を取り出した。

黒い、薔薇。



「へぇ、リサの薔薇って黒いのね。」

あまり見ないわよね、とギャリーは私の薔薇のボトルを手に取りよく見ていた。

「ギャリーの青い薔薇のほうが見ないよ。」

だって元々存在しない色。
人工的に作られたブルーローズは今だ青い薔薇といっても青紫色止まりだ。
ここまで見事な青色は未だ存在しないんじゃないだろうか?

私もギャリーに青い薔薇を見せてと手を伸ばす。

見事な青色に染まった薔薇はとても綺麗で
私もこんな色だったら良かったのに。
黒い薔薇なんて全然綺麗じゃない。


「ギャリー、手で持ってると危ないだろうし私の薔薇と一緒にボトルの中に入れて持っておこうか?」


うーん、でもなんか自分で持っていないと落ち着かないし大丈夫よ。


そろそろ行きましょうか。



さすがにこんな手には引っかからないか。
まぁ、命なんて簡単に人の手に渡せないもんね。

でも、まぁ



いつか、手に入れてやりますけど。







(ギャリー、しってる?)

私の薔薇黒いでしょう?
黒い薔薇の花言葉はね





(『貴方のものは私だけのもの』って言うんだって。)





目をつけたものは逃がさない。

ボトルに入った1本の黒い薔薇は青い薔薇と一緒になるのを待っている。

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