にせものamoroso。 | ナノ

 イロハ 6

「今後のこと、どう考えてる?」


2年の冬。生徒会長に聞かれた。今後のこと、ってどういうこと。


「そろそろ僕らも引退だし、役職決めとか考えていかなきゃいけないなって」



生徒会での今後、か。



「…考えさせてもらってもいいですか…まだ決まってなくて」
「うん、もちろん。でも城崎くんって、会長職に興味あると思ってたけど」
「…いや、…。そういえば会長って、頭いいんですよね。いつも1番」
「そんな、たまたまだよ」
「とりあえず…またご連絡します」
「ありがと」



生徒会室を出ると、カナメが待っていた。



「カナメ、どしたの」
「お魚ちゃんのこと迎えにきた」
「めずらし」
「会長に聞かれた?」
「うん聞かれた」
「どうすんの?」
「どうしようかな。正直迷ってる」


俺にできんのかな、生徒会長なんて。



「カナメは?」
「アヤが会長やらないなら俺がやる」
「え」
「アヤが会長やりたいなら、副会長かな」
「何それ。カナメは何やりたいの?」
「アヤがしたくないこと」
「はあ?」



ばかにしてんの?



「カナメって何考えてるかよくわかんない」
「アヤのこと」
「…なんかカナメと話してるとイライラする」
「アヤ」
「ついてくんなっ」
「だって行き先同じだし」
「…」




無言で寮に戻った。



カナメもついてきたけど、無視した。自分の部屋のテレビの音量をあげて、ふて寝した。

そのあと共有スペースに行ってみたけど、カナメはそこにはいなくて。


今まで何回か喧嘩もしたけど、そういえばカナメはいつも共有スペースにいた。そして自然に仲直りしてきたんだった。




「カナメ?」
「…。」



無視!


カナメの個人スペースに向かって呼んでみたけど、返事がない。



「…寝てんの?」



勝手にドアを開けると、部屋は真っ暗だった。



すぅ、と眠るカナメに、ごめん。と一言呟いた。


全部八つ当たりだ。自分に自信がないのは、自分のせいなのに。


おでこにかかる前髪をどけたとき、ちょっとした違和感。



「…カナメ?あっつくない?」



急いで体温計を自分の部屋から持ってきてカナメの脇にはさむ。



「ん、アヤ?」
「カナメ、具合悪いの?」
「…そういえば頭が痛いような…」
「いつから!」
「んー、朝?」
「ばかじゃん!」


何してんの、この人。頭いたいのに学校行ったの?しかも俺のこと迎えにきたの?



「うわっ、熱あるじゃん!食欲は?」
「んー、ない」
「薬は?」
「どっか入ってる」
「ルームサービス頼む。おかゆ。ちょっと待ってて」
「ふふ」
「何笑ってんの、カナメ」
「よくあるドラマだったらさ、」
「ドラマ?」
「こういうとき、アヤが作ってくれるんじゃない?」
「よくあるドラマってなんだし。それなら俺は可愛い女子だよ」


ふふふ、とカナメは笑っている。笑えるくらい元気があるなら看病しないよ?




「アヤは可愛いよ」
「はあ?」


胸元を引っ張られて、そのまま唇と唇がくっついた。

びっくりして離れたら、まだカナメは笑ってた。



「…哺乳類ってキスも好きなわけ?」
「そうみたい」




俺は魚だよ。地上じゃ息ができない。

いきなり地上につれてこられた深海魚のように、めんたまとびでて内蔵破裂して、そのまま死んじゃいそうだと思った。


カナメにおいでおいでと手招きされて、俺は言われるがままに何度も何度も風邪菌をうつされた。


prev / next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -