にせものamoroso。 | ナノ

 イロハ 5

高2になって、生徒会に入った。それと同時に「ファンクラブ作っていいですか?」と聞かれた。



ファンクラブねえ…別にいいけど、なんだかむずむずする響きだな。



「いいよ、よろしくね」
「ありがとうございます!やっぱり城崎さんは、生徒会長になるんですか?」
「うーん、まだわからないけど、それを目指してがんばるね」
「そうですよね!城崎さんは城崎家ですもんね!」


あ、俺自身じゃなく、城崎家のファンクラブ?まあ、別にそれもいいけど。




その足で、生徒会の顔合わせに向かった。そこには一緒に当選したカナメもいた。


「カナメが生徒会に立候補するなんて思わなかった。真似すんなし」
「アヤが真似したんでしょ」
「ばかじゃん」
「ばかじゃん」
「まーねーすーるーな!」



カナメは、はははと笑った。




カナメとの関係が純粋にいいものだったのは、ここまでだったのかもしれない。




「2位…」



1位からの転落は、あっさりと来た。2年の夏だった。大きな点差ではなくて、それでも、1位と2位には大きな溝があった。



父さんに呼ばれた。



「大丈夫か」
「何が」
「…大丈夫ならそれでいいが…」
「2位がそんなに不満ならまわりくどく言うなよ」
「そんなことは言ってない」
「じゃあなんでわざわざ呼び出すんだよ、今まで一度も何も言ってきたことないだろ」
「それは、」
「父さんはずっと1位だったんだよな。そんで生徒会に入って、会長にもなって。ダメ息子で悪かったな!」


理事長室を飛び出した。



俺は父さんみたいにはなれない。なれないし、父さんもきっとそんなことは期待していない。





寮の部屋に戻ったら、寝ているカナメがいた。



「お前のせいだ!」
「いって」



完全なる八つ当たりで、脚を蹴っとばして起こす。



「アヤ、なに荒ぶってんの?」


腕を引っ張られて、あっさりとカナメの隣に体勢を崩す。



そのまま、また頭を撫でられた。




「だから俺は哺乳類じゃないってば」
「そう?さっきより心拍ゆっくりだけど」
「さわんなよ」
「アヤ、深呼吸して。空気おいしい?」
「何それ」
「魚類のアヤに、空気のおいしさ教えてあげてんの」
「ばかじゃん」
「とかいって、素直に深呼吸するアヤって可愛いね」
「うるっさ」



でもたしかに、カナメの隣にいるとちゃんと空気吸えてる感じする。



「…カナメ、1位おめでと」
「ありがと」



それからずっと、ずっとカナメが1位だった。

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