にせものamoroso。 | ナノ

 イロハ 4

「城崎くんって、ほんとすごいね、天才?」



定期テストの結果発表、掲示板の前で近くにいた人に話しかけられた。



今回も1位を取れて安心していた俺に、天才という言葉は不釣り合いだと思ったけど、悪くはない称号だなー、なんて。



「そんなことないよ」
「いやいや、すごいよ!だって連続だもん!僕も今回結構がんばったんだけど全然で!やっぱり頭の作りが違うよね!」
「いや、そんなことは…」



頭の作りはたぶん、悪い方だ。父さんがここの学校に進むのをよく思わないくらいには、悪い。

そうだ、父さんに報告しないと。それから三上にも。



「どんなに頑張っても天才には勝てないな〜」
「いや、」


なんとかわせばいいのかわからなくて、言い淀む俺の前に、影がかかる。



「アヤ、すげえ勉強してたよ」
「カナメ…」



自然に俺の前に立ったのは、カナメだった。カナメは続ける。



「毎日、その日のノート見返して、問題解き直して。週末だってそう。一週間の復習を改めてしてた。それをきっとアヤは何年も続けてきたんだ」
「へ、へえ。城崎くんって、ガリ勉タイプだったんだね」
「負け犬ってよく吠えんね。知ってる?みんな忘れるスピードは同じ。アヤは継続してきただけ。努力家なの。じゃ」


腕を引っ張られて、そのまま廊下を進んだ。



「ばかカナメ」
「なに」
「何ばらしてんの。がり勉とか言われたんですけど」
「そんなの言わせておけばいいよ」
「天才って言われるのだって、べつにやじゃなかった」
「別に、天才を否定したわけじゃない。アヤは、頑張る天才」
「…ばかじゃん」




"頑張る天才"、

努力も無しにしないその言い方が、カナメらしくて嫌いじゃないと思った。



「1位、おめでと」
「何、あらたまって。」



部屋に戻るとカナメは、俺の頭をぽんぽんと撫でた。



「哺乳類ってみんな、頭撫でられると落ち着くらしい」
「俺、哺乳類じゃないから落ち着かない」
「アヤって哺乳類じゃないの?じゃあ何?」
「んー、魚類かな。深海魚」
「リュウグウノツカイとか?俺、あれ好き」
「リュウグウ…?何それ。深海魚よく知らない」
「そっちこそ何それ。ばかじゃん」




カナメはやっぱり失礼なやつだと思った。


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