▼ da capo 4
「…」
「…」
しん、と沈黙。
「…カナメ、授業は?」
「抜けてきた」
「、ばかじゃん」
「それはアヤでしょ」
そうかもしれない。
「で?」
「なに、」
「俺になにか言うことないの?アヤ」
「ない」
別にない。ただ、この学園にいたくなかったから転校した。それだけで。
けれどそれを、同室者であるカナメに言わなくちゃいけない理由なんて、ない。
「…あ、いっこだけあった。電話出なくてごめんね」
「…」
カナメは明らかに納得しない顔をしていたけど、俺の口は止まらない。
「カズヤが俺とカナメの仲疑っててさ、すごい妬くタイプだから、あんま携帯とか見れなくて」
「は、」
「気分で転校してみたら、あいつ文化祭まで追いかけてくるからさ。父さんも戻れっていうし、だから戻ってきた」
「、」
「だからごめんね、カナメ」
いろいろごめんね。勝手に被害妄想して、勝手に出ていって、全部遮断して。
でもそれらのごめんねは、あえて伝えることはしない。
ー くらべることなんて、ないよ。
タクミのいうとおりだ。カナメはカナメ。俺は俺。
「卒業、近いけどさ。今までどおり仲良くしてよ、カナメ」
「っ、今までどおり?ねえそれがアヤの答えなの」
「答えもなにも…」
「アヤ、次の休み空いてる?」
話したいことがある、とカナメは言った。
「…ごめん、あー…カズヤと出かける」
「そ……」
でも今は、カナメと素直に話せる自信がないからごめんね。
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