にせものamoroso。 | ナノ

 da capo 4

「…」
「…」




しん、と沈黙。





「…カナメ、授業は?」
「抜けてきた」
「、ばかじゃん」
「それはアヤでしょ」




そうかもしれない。




「で?」
「なに、」
「俺になにか言うことないの?アヤ」
「ない」




別にない。ただ、この学園にいたくなかったから転校した。それだけで。

けれどそれを、同室者であるカナメに言わなくちゃいけない理由なんて、ない。



「…あ、いっこだけあった。電話出なくてごめんね」
「…」




カナメは明らかに納得しない顔をしていたけど、俺の口は止まらない。




「カズヤが俺とカナメの仲疑っててさ、すごい妬くタイプだから、あんま携帯とか見れなくて」
「は、」
「気分で転校してみたら、あいつ文化祭まで追いかけてくるからさ。父さんも戻れっていうし、だから戻ってきた」
「、」
「だからごめんね、カナメ」



いろいろごめんね。勝手に被害妄想して、勝手に出ていって、全部遮断して。

でもそれらのごめんねは、あえて伝えることはしない。



ー くらべることなんて、ないよ。




タクミのいうとおりだ。カナメはカナメ。俺は俺。





「卒業、近いけどさ。今までどおり仲良くしてよ、カナメ」
「っ、今までどおり?ねえそれがアヤの答えなの」
「答えもなにも…」
「アヤ、次の休み空いてる?」



話したいことがある、とカナメは言った。



「…ごめん、あー…カズヤと出かける」
「そ……」




でも今は、カナメと素直に話せる自信がないからごめんね。

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