にせものamabile。 | ナノ

 A-dur 15

事件が起こるのは、いつだって突然。




「謹慎…?」




僕がすべてを知ったのは、すべてが終わったあとで。



「そう、皆川潤くん。一週間の謹慎処分だってよ…」
「なんで…」



声がかすれたのが、自分でも分かった。

放課後の教室。のむちゃんといっちーが、心配そうな顔で僕を見る。

いっちー、他クラスなのに教室入って来ちゃってるし。だなんて、どうでもいいことを考えた。現実逃避。



リーダーに決まって、1週間。つまり潤ちゃんと喧嘩してから1週間。

何度も謝ろうって、アドレス帳から潤ちゃんを引っ張り出してみては閉じ、もう一度表示して眺めては、ため息。

なんて謝ればいいのかな?会って言えばいいのかな?そのためにはどう連絡すればいいのかな…?


分からないことばかり。


遠目に見つけても声をかける勇気が出なくて、日に日に元気のなくなっていくのは分かっていたのに、どうしてそのままにしてしまったんだろう。



謝り方なんて、どうだってよかったのに。



「皆川が真中に嫌がらせした、っていう噂。俺のクラスもその話題で持ちきりだよ」
「え…」
「副会長あたりの親衛隊と一緒にやったみたいだよ〜その子たちは捕まってないけどね。少なくとも園田さまのとこじゃないと思うな、だって制裁禁止だもんね?」
「うん…そう…この前、決まった…」
「だから他の親衛隊と一緒にやったんかね?」
「潤ちゃんはそんなこと…」


しないと、思うけど。…。



でも、潤ちゃんが本当のところ何を考えているかなんて、僕にはわかんないんだ…。


「…決めたぁ。今日、会ってみる。仲直り、したいしー…」
「橋本、皆川と喧嘩中だったの?」
「うん…僕、雪ちゃんへの呼び出しとかね、やめたかったの…」
「そんでリーダーなったんだろ?橋本えらいな」
「へへ、ありがとお」


いっちーにわしゃわしゃっと頭を撫でられた。お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな。僕は一人っ子だから、兄弟ってどんな感じかわからないけれど。


「潤ちゃんは、村崎くんのことがすきだからー…雪ちゃんたちが補佐に決まったのは悲しいみたいでえ、それがきっかけでちょっと、ね」
「そうだったのか…」
「でも僕、潤ちゃんがそんなことするなんて、思えないんだあ…だからちゃんと、潤ちゃんの口から聞きたいの…」
「そうだね!謹慎だから、絶対部屋にいると思うし!匠ちゃん、今日行ってみたら?」


明日は休みだし、その勇気がしぼんじゃう前に!と、のむちゃんは僕の顔を覗き込んだ。


「ん。ありがとお」
「ひいかわいい!匠ちゃんその笑顔写メ撮っていい?!」
「だめーっ!ってもう撮ってるし!ばか!」
「これ高く売れるかな?!」
「野村、そろそろ橋本に嫌われても知らないからな?」
「だってこれ見て!攻めズの皆さまに売ったらわりといいお値段に…」
「セメズって?!ってかのむちゃんちお金に困ってないでしょばかー!それなら我が家にちょうだいよお!」
「いいよ?!実際僕、匠ちゃんの写真見てこっそり悶える攻めズの皆さまが見たいだけだから!」
「のむちゃん本当悪趣味!売ったりしたら絶交だからね!」
「それはイヤ!!」


わーんっ!と泣き真似をするのむちゃん。それもう、飽きたからやめていいよ。


「わーんわーん」
「あ、リーダーメーリスだあ」
「わーん…お、初めてじゃない?リーダーのメーリス」


速攻で泣き真似をやめたのむちゃん。もう!



「テストメール以外は初めてかもお!…あ、なんか集合だってえ…ちょっと行って来ないと」
「なんかいきなりだね?!夜ごはん一緒に食べられる?」
「どのくらいかかるんだろお、分かったら連絡していーい?」
「おっけー!行ってらっしゃい!」


集合場所は…寮の全然知らない棟だ。そもそも学年棟ではないみたい。はて。


「これどーやっていくんだろ…"17:30、特別棟の14階に来るように。"…情報これだけ?」


特別棟ってどこさ!ぷんすかだよ!

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