▼ G-dur 20
「ねー、今日の園田さま見た?!」
「え、見てない見てなあい、どだった?かっこよかったあ?!」
「なんかね体育でサッカーやってるのを偶然見たの!すごかったの!ゴール3回も入れてたの!」
「わあーーすごおい!」
けっ、顔も良くて頭も良くてスポーツも出来るなんて神様はなんて不公平なんだろう!そう思いながらも、テンションが上がってしまう僕。いやいや、だってねあんな性格ですけど、ちょうかっこいいんですよ響会長って。どこのモデルですか?っていう。喋らなければ、いい男なのです。
僕たち親衛隊の1年生組はわーきゃー騒ぎながらお茶会に向かった。
「っていうかつまりジャージ姿見ちゃったってこと?!」
「そー!やばかった、あれがフェロモンかと思った!」
「「「うらやましい!!!」」」
のむちゃんがよく、親衛隊はチワワだデフォだって言うけれど、その意味が最近ちょっとだけわかった。ちっちゃくてきゃんきゃんって感じがとてもよく似ている。
「「「こんにちはー」」」
みんなで元気よく挨拶をして部屋に入ると、何人か既にソファに座っていた。
歩先ぱいもその中の一人で、僕に気がついた途端に立ち上がって手を振ってくれた。僕はそれに手を振りかえしながら、他の1年生たちと一緒にソファに座った。
あれ。あれれ。
歩先ぱいが座っているソファ席に、見覚えのある髪色。金色に近い明るい茶髪、天使の輪。
「菫さん!」
僕は思わず立ち上がって、後ろ姿に声をかけた。
ガッシャーン
それと同時に、テーブルが倒れ散らばる食器。高級感があふれる食器は地面に叩きつけられるように落ちて割れてしまった。
「…誰だ俺の名前を呼びやがったのは」
え。
僕はそこでやっと理解した。その後ろ姿の人がテーブルを蹴り倒したのだということを。
その人は立ち上がって、こちらを振り返った。
(え、誰…?!)
そこに立っていたのは180cmを超えるであろう長身のイケメンさん。眉間にしわは寄ってるけれど、綺麗なブラウンの瞳やそれをふちどるながいまつげ、どこをとって見ても美しい。
でもアシンメトリーの長髪や何個空いてるのかわからないほどのピアス、そしてがっしりとした身体つきを総合してみると、完全に関わりあいたくない人種にカテゴライズされるようなお人だった。
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