にせものamabile。 | ナノ

 H-dur 20

「2日目おつかれさまでしたー!」
「「「おつかれさまでしたー!!!」」」



文化祭2日目もぶじに終わりそう。1日目と2日目は休日だから周辺校への公開があったのだけれど、3日目の明日は校内だけ。

だから今日がぶじ終わるというのは大きなことで。

のむちゃんのテンションが高いのも理解できる。…いや、いつも高いけどね、のむちゃんは。



「もし足りなくなったものとか明日なくなりそうなものあったらそれぞれ野村まで報告して!じゃあ、解散!」
「「「おつかれ〜」」」


のむちゃんが教卓で挨拶をして、帰りのHRは終わった。のむちゃん、おつかれさま!!


「のむちゃ〜ん!きょうの夜ってさあ〜、」
「匠ちゃん特別棟行くんでしょ?あのさ〜やめてよね情報屋の使い方まちがってるからね!」
「え?え?」


ダメ元で特別棟に一緒に来てくれないかのむちゃんに聞こうと思ったのに…なぜ既に知っている?!


「匠ちゃん、今日なに食べたいの?」
「へ」
「いいから答えて!」
「んー…ハンバーグ?」
「おっけー!園田会長からメールきたんだよ〜もー、自分で聞いてって感じ!まあほしい情報はもらえたからいいけど!」
「…」


響会長が情報と交換に、僕の食べたいものをのむちゃんに聞いたってこと?

何それ!たしかに自分で聞いてくれればいいのに!わざわざのむちゃんをはさむなんて!もう!


「お?匠ちゃん、ご機嫌ななめ?」
「…分かるぅ?」
「すーぐ顔に出るからね!!かわいい!!」


怒ってるところすらかわいいって、すごいね!とのむちゃん。いやいや、このぶっすーとした顔をかわいいと思えるのむちゃんの目の方がすごいよ。


「よし、言いたいことあるし、特別棟乗り込んでくる〜」
「なに!告白?!」
「ちーがーいーまーすー」



のむちゃんにからかわれながら、一緒に寮まで帰る。いっちーとのツーショットを見せたら、のむちゃんはものすんごい笑ってた。

その反応がいっちーの予想通りすぎて、僕まで笑えてきてしまう。


「特別棟、何時に行くの?」
「20時!ちょっと遅いよねえ、やっぱり忙しいみたい!」


ごはんを一緒に食べるということは、それまでひまだな。お風呂とか、すましておこっかな。


「お風呂入って着替えてから行くかー!」


パジャマなら、帰ってきたらそのままばたんきゅーできる!!


「えっ、匠ちゃん、クマさんパジャマで行くの?」
「んなわけないでしょーが!ばか!」
「じゃあ何着ていくのさ?」
「んー、いっちーにもらったスエット?」
「あー、あの似合わないやつね!」


失礼!!!

いっちーが部屋着として着てるスエットがかっこよくて、いいなあって言ったら次の誕生日にいっちーが買ってくれた。

もうその優しさにきゅんとしたよ。僕の呟きを覚えてくれていたなんて。

友達っていいなあって、改めて思ったもん。



「たまに匠ちゃんって、かっこいい男目指し始めるよね!!」
「いやいや、つねに目指してますからねえ?」
「ははははは」
「笑うなっ」
「明日報告よろしくね〜!」
「しません!」



ごめんごめん〜!とのむちゃん。全然悪いと思っていなさそうだけど、僕は心が広いから許してあげるよ!


「そういえば特別棟までの安全な道、見つけたから教えてあげる!」
「おお!さすがのむちゃん!!」


のむちゃんによると、道を逸れて木がたくさん入ってるほうに進んで行けば、誰にも会わずに特別棟の裏に出るらしい。

のむちゃんの情報網、役に立つね!


「今日、そこ通ってみるね!!」





…とのむちゃんには言ったけど。










「ここ、どこ…」







現在、時刻は19:55です。本当なら特別棟についてるよ。僕がいるのは木々の中。うん。迷ったよね。

っていうか暗い!!あかりが少ない!!


「ひー、戻るべき?進むべき?でもどっちがどっち?」


とりあえず響会長にメールだ!


「ちょっと遅れます、…送信」


ヴーヴー


電話早いよ!!!



「もしもし…」
【遅れるって、どうした?】
「迷いました…」
【は?】
「いやっあの…裏口に着く道、のむちゃんに教えてもらったんですけど…」
【野村のやつ…】
「いやいや、僕がバカなせいです…」
【匠にンな高度なことやらせようとするとかありえねぇって話】
「ひどいっっっ…」


ちょっと辛らつすぎない?!たしかに頭わるいけど!のむちゃんや響会長とは違って!


【そこで動かないで待ってろ。迎えに行く】
「えっ、いいです大丈夫です!なんとか着きますから!」
【遭難したらどうすんだ?あ?】
「でも…」
【一刻も早く会いてえんだよ。察しろ】


プツッと電話が切れた。



ちょっ…ちょっと何?!何いまの!!!「クマ可愛かった」発言といい!今のといい!僕を殺す気なの?!


のののののむちゃん助けて!こういうときどんな顔して待ってればいいの?響会長が来たら、どんなふうに接すればいいの?


「のむちゃん、僕、口から心臓出そう…」とメールをしたら、「会長の口で蓋してもらいな☆」と全然役に立たないアドバイスがかえってきた。

のむちゃんのばか!



「匠?」


ガサガサと草を歩く音とともに、響会長の声がした。



「あっ…」
「いた。おまえ、何こんなとこで迷ってんの」
「かいちょ、」
「ほら、行くぞ」


GPS、やっぱないとダメだな。と響会長は僕の腕を取って歩き出す。


…響会長、普通すぎない?!会いたいとか、さらっと言っちゃって!僕ばっかり意識して、ドキドキして…


「響会長のばか」
「ああ?」
「…でも迎えに、迎えに来てくれて、ありがとう、でした」
「おう」


暗いけど。響会長が前歩いてるから顔見えないけど。


響会長、絶対笑ってる。

ドギマギしてるのが僕だけなの、すっごくくやしいけどさ、それだけでうれしくなっちゃう。


すきになったもん負けだから、仕方ないよね。

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