▼ A-dur 16
「え、オートロックなんですけど…入り口」
マップを頼りに、進んで行ったはいいけれど。
特別棟らしき建物をやっと見つけて、エントランスホールに入った。
そこにはロックがかかった自動ドアとインターホン。部屋番号を押すためのボタンがあるけれど、指定されたのは"14階"。部屋番号は分からない。
「1…4…OK!うぅ、ダメかぁ…」
ダメ元で、14って押してみたけどうまくいかなかった。カードキーをかざすところはあるみたいだけれど…僕のカードキーは自分の部屋しかあかないし。
部活に入ってる子は、部室も開けられるようになっているらしいけれど。
「誰か来るまで待ってみよっかな…」
とは言ってもあと数分で17:30。誰か通るか、半分賭け。
「あ、棗さんに電話してみるか!
………出ない!きぃ!」
メーリスを改めて確認する。連絡が来たのは17時。こんな直前に呼び出されるものなのかな、大変だなリーダーって…
「これで開いちゃったりして〜…っ!!開いた…」
またまたダメ元で自分のカードキーをかざしたら、扉が開いた。
なんだ、ほぼフェイクみたいなものか、このロック。学園のひとなら入れる扉だ。
そういえば、差出人は何年生だろ?
s1105あっとまーく…
あれ。名前表示されてないし、携帯のアドレスではなくて、フリーメールだし。っていうかこれ、BCCとかできるの?宛先も僕だけだし。
急いでいたからちゃんと確認してなかったけれど、ちょっと謎に包まれたメールだな。
とりあえず指定されたフロアに向かおうと、エレベーターのボタンを呼び出した。中に入って無駄に綺麗な装飾に1人でツッコミを入れつつ、14を押す。
あれれ?反応しない。
よく見るとここにもカードキーをかざすところがあって。無駄に厳重!ピピ、と認識させると最上階が光った。
何これ、便利!
今日の集まり、早く終わるといいな。そうしたら潤ちゃんと会えるし、のむちゃんともごはんを食べに行ける。
「あ、着いた。…ぇ、」
「3分の遅刻。」
エレベーターの扉が開いて、1歩踏み出したところですぐに目に入った。
「園田、さま…」
だってこのフロア、ひろい廊下と部屋のドア1つ。そのドアに寄りかかり、腕組みをして立つのは園田会長。
「なんで…」
他には、誰もいない。
僕と園田さまの、ふたりきり。
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