変わり者の青年が人の子供を拾って帰ってきた。
その知らせはすぐに里中を駆け巡った。
鬼の青年の片腕に収まっていたのは三つか四つの人の幼子で、その日の襲撃先である集落の生き残りだという。
天涯孤独となった人の子に同情でもしたのかと問えば青年は首を横に振った。
「落ちていた。」だから拾った。
青年が集落を落としに行くのはこれが初めてではない。
生き残った老若男女だって、これまで何人も始末していた。
変わり者でこういうときくらいしか里と関わりを持たない青年であったが、その仕事ぶりは極めて有能であったし、そもそも情だなんだといった人間らしい感情から最も遠いところにいるのがこの青年であった。
その青年が落ちていたから拾ったと言っている。一連の行動にそれ以上の意味も動機もないことは確かだった。
「拾ってみたがあれは面白い。人の子供が動くのは初めて見た。上手く出来ている。しかもあれで口が利ける」
「"だから拾った?"」
「ああ」
確かにこの里ではしばらく子供が生まれていないから、物珍しかったのかもしれない。珍しく彼は饒舌だった。
「あれは俺が育てる」
彼は変わり者だが、その上気まぐれだった。
一夜明けて出た結論はたったそれだけ。
苦し紛れに誰かが問う。
「子供の名前は?」
「あれに名前まであるのか」
珍しくすこし驚いたような表情を浮かべた彼に、その場にいた全員が頭を抱えた。