それは、確かに光だった。
退屈な集会だ。誰か先生がステージに立って話しては、また別の先生が諸注意を行う。
私の耳は、話よりもむしろ外の雨の音に集中していた。
友達が、後ろから耳打ちする。
「雨、酷すぎない?」
「うん、」
「私、傘持ってきてないんだけど」
「大丈夫じゃないかな、風強いし。多分使えないよ、傘」
あくびをひとつかみ殺したとき、突如照明が消えた。
暗転した体育館で、騒ぎ出す生徒たち。ざわめきと雨の音が体育館を包み込む。
不意に、薄暗い視界の端で、ぼんやりとなにかが光っているのが見えた。
携帯の画面だとか、そういう人工的な光ではない、なにか。
無意識に目がそちらにいった刹那、再び体育館に光が戻った。消えたときと同じくらい、突然に。
停電です、わかりきった説明がスピーカーからひびく。ざわめきは、収まらない。
私は、視線の先から、目を離せない。
見間違い、だろうか。
私が見た、光。
改め男子生徒は、なにごとも起こっていないかのように、ただそこに立っていた。
前奏、一番星
(けれど、彼はその一瞬前まで、たしかに光っていたのだ。)