いつもよりゆっくりと湯船につかり、のぼせる直前にお湯から出る。タオルに体を包みながら、ついさっきのことを思い出す。
見られた、よね。うん、完璧に見ていた。上から下まで。

「……あのバカッ」

ただでさえ風呂上がりで熱い体が、さらに熱くなる。叫び出したいほどの羞恥心。阿近とまともに顔を合わせられる気がしない。どうにも出ていきにくい気まずさを無理矢理押し殺して、廊下へ続く扉を開けた。

「おせーよ」
「キャァァッ!!」

一歩足を踏み出して見れば、阿近が扉の横で座り込みながら見上げていた。

「ななに、なにしてんの?」
「行くぞ」
「どこへ?!」

いきなり腕を掴みズンズン進んでいく阿近に引っ張られ、向かった先は寝室。

「なんなの?!」
「寝ろ」
「へ?」

間の抜けた声を出す私に、阿近は短くため息をつく。と、またもやいきなり腕を引っ張り私を引き寄せ、抱き上げた。

「えぇぇ?!」

その体の一体どこにそんな力があるのか。そんなことより、信じられないくらい体は密着しているわ阿近の顔は近いわで、一気に体温は急上昇する。
それもつかの間、阿近は私をベッドの上にポイッと放り投げた。

「わぁ!」

ボフッとベッドにお尻から着地する。何がなんだかさっぱり分からないまま、腕を組みながら見下ろしてくる阿近を見つめた。

「さっさと寝ろ」
「なんで…?」
「余計なこと考えねーようにだよ」

もしかして、さっきからの意味不明な行動は私を気遣ってくれているんだろうか。だとしたらすごく分かりづらいし心臓に悪い。
でもすごく阿近らしいと思った。

「ありがと…」
「おう」
「でもそんな見下ろされてたら寝れないんだけど?」
「…よし、一緒に寝てやろう」
「はぁ?!ちょ、ダメダメ!入ってこないでよ!」


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