5:30 仕事を切り上げる
5:40 電車で帰宅
6:00 自宅近くのスーパーに寄る

6:45 …悩む

「…お客様、何かお探しですか?」
「…人参の味がしない人参と、ピーマンの味がしないピーマンと、魚介類の味がしない魚介類を」
「…は?」

約45分間、何も手に取らないまま同じ売り場をウロウロウロウロしていれば、さすがに不審に思われるか。なんでスーパーでこんなに悩まなきゃならないんだ。
すべて奴のせいだ。今日こそはあの性根を叩き直してやる。

「すみません何でもないです」

なんの変哲もない普通の食材をカゴに投げ入れ、困った顔の店員を後に残してレジへ向かった。
…ていうかアイツ、まだいるのかな。


* * * * *

「…おかえり」
「…ただいま」

まぁ分かってたことなんだけど。
コイツが毎日出迎えてくれることが当たり前になった今日この頃。数えてみればもう2週間。
阿近はいまだ、私の部屋に居ついている。

「ていうかなんなのよこの部屋は!!」
「………ん?」

阿近は私の声に数秒遅れて反応し、本に注がれていた視線を私に合わせる。聞こえていなかったのか、頭上に「?」を浮かべながら私を見つめる。
…どうやったら1日でここまで散らかせるんだろう。部屋の至る所に読み捨てられた本、本、本……

「読んだら元の位置に戻す!」
「まだ読んでる」
「一冊ずつ読みなさい!」

大きな本棚の前に胡座をかいて座り込み、平然と本を読み続ける阿近。
私が仕事でいない日中、私が趣味で集めた大量の本を読んで過ごすのが阿近のライフスタイルとなっている。毎日のように言っても聞かないなら言っても無駄なんだろうか…部屋に散らばる本を広い集めながら心は諦めモード。


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