サッと携帯を取り出し、開く。 「何してんだ?」 「警察を呼ぶのよ。一人暮らしの女の部屋に怪しい男が居座っているとね」 「ダメだ」 「じゃあ出てけ!」 「自分で連れ込んだんだろ」 「ぅ…ッ」 それを言われたらもう何も言えない…。確かに、昨日この男を拾って部屋に連れてきたのは自分だ。自分の意志で、この男を拾ったんだ。 ピッと電源ボタンを押し携帯を閉じる。 フッと笑う声が聞こえた。 「なに笑ってんのよ!」 「ここにおいてくれる?」 「お、おくわけないでしょ」 こんな男と一緒に暮らせるわけない!なんてモノを拾ってきてしまったんだろう… 「じゃあ、ペットでいいよ」 「…はぁ?!」 「名前も好きにつけていい。ご主人様のお好きなように」 「なに言って…?!」 ペット?!何言ってんのコイツ?!やっぱり変な奴だ! にっと笑ってとんでもないことを言った男。でも冗談を言っているようには見えない。 「俺、行くところないんだ」 「え…?」 一瞬見せた、底の見えない深く暗い海のような表情。 「…家族は?」 「いない」 「恋人は…」 「今はいない」 見たところ、私と同い年か少し上か。若い。その年で、天涯孤独…?図らずも同情してしまった。 その変化を阿近は見逃さない。 「とりあえずソファで寝るから」 「は?」 「まぁ昇進したら、同じベッドで寝ようぜ?」 はぁ?!昇進って何よペットにそんな制度ないわよっていうか… 「誰が一緒に寝るか!!」 「わかった、ソファで寝る」 「そうしてちょうだい」 って……あれ?ペットにすること決定?! 「よろしく、ご主人様」 サァーっと血の気が引いていくのがわかった。…有り得ない!!! 「ちょっと待って!まだ飼うなんて…ッ…」 ニッと阿近は笑った。獰猛な大型犬が、飼い主にだけ見せる表情…不覚にもドキリとしてしまった…! 「…怪我が治るまでだからね!」 一体この先どうなるのか…… And that's all? |