自分の愚かさに対する自己嫌悪と二日酔いによる頭痛で頭を抱えていると、上から檜佐木副隊長の声がした。

「それに、」

ぎし、と檜佐木副隊長の片膝がベッドに乗って。見上げると檜佐木副隊長が見下ろしていた。

「お前、泣いてた」
「…え?」
「なんか抱えてるんだろ。お前の腕じゃ抱えきれないくらい重たい何か。…初めて会った時からそう感じてた。あの時からずっと万葉のことが気になってた。虚勢はって冷静ぶって、でも本当は辛くて誰にも頼れなくて、押しつぶされそうになってるんじゃないかって」
「…」
「相談くらいなら乗れるぜ。一応お前より人生経験豊富なつもりだし」
「……」
「…俺はお前の力になりたいし」

そっと、頭を撫でられた。髪の毛をかするくらい微かに、優しく。そして檜佐木副隊長は出ていってしまった。

「なんで…」

『なんか抱えてるんだろ』
『本当は辛くて、誰にも頼れなくて』

どうしてそんなことがわかるのですか…?
右手にはまだ、檜佐木副隊長の熱が残っている。ぎゅっと握り締めた手に、涙が一粒落ちた。

「だめ…」

優しくされるの、慣れてない。誰かと深く関わるのが怖い。失うのが、怖い。

「私の中に入ってこないで…」

私は、誰も……



* * *

「ひでぇじゃねぇか!!あの後俺店の前で酔いつぶれて朝まで寝ちまってたんだぞ?!風邪ひかなかったからまだよかったが…つーかお前と檜佐木先輩あの後どうしたんだよ?…ま、まさか…」
「……」
「…おい。聞いてるか?」
「……はぁ…」
「万葉聞いてるか?!」
「わっ…びっくりした」
「どうしたんだよ…本当に檜佐木先輩と何かあったのか…?」
「…ッ!…何もありません」

上の空だった万葉の顔色が、サッと桃色に変わった。そして問い詰める間もなく執務室を出て行ってしまった。…怪しい。何かあったのか?

「…霊圧の名残があるな。この霊圧には覚えがある」
「え?」

いつの間にか傍にいた朽木隊長が小さな声で呟いた。

「万葉に何者かの霊圧の名残があると言ったのだが…そういった能力はお前の苦手分野か」

たしかにそんな繊細な能力は昔からの苦手分野で。言われても全く分からない。
しかし、なんで俺はこんなに万葉のことばっかり考えてるんだ?


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