そうだ。もう目的以外に剣は握らない。決めたんだ…。
頭、痛い…もう朝?右手が暖かい。一瞬、夢の続きで、嘲蜜を握っているのかと思った。でも…違う。こんなに優しい暖かさ、知らない。
眼を開くと澄んだ朝日が眩しくて何も見えない。徐々に眼が慣れてきたとき、自分の手が何を握っていたのかが見えた。
…手だ。だれの手?

「…ん…」

誰の声…?頭が混乱してきた。誰かいる。ちょっと待って…私、昨日どうやって帰ってきた?まばたきを数回繰り返す。クリアになった視界に69の文字が見えた。

「…なっ…?!」

目の前に檜佐木副隊長の寝顔が見えた。
訳が分からず、檜佐木副隊長は寝ているのに意外と力が強くて手を離すこともできなくて、あわあわしているうちに檜佐木副隊長の眼が薄く開いて私を見た。数秒間の沈黙の間、見つめあった。

「…ぉはよ」
「…きゃあぁぁ!!」
「うわびっくりした!!」
「な、な、なんで…?!あの、あの…」
「おい落ち着けよ…」

むっくり起き上がって伸びをする檜佐木副隊長はこの状況に動揺していない。
見ると、私はベッドに寝て、檜佐木副隊長は床に座っていた。お互い死覇装は着ている。何もなかった?…いやでも…!

「どうして檜佐木服隊長がいるのですか?!」
「お前が酔いつぶれるから」
「え、あ…申し訳ありません…でも…!」
「それに、お前が俺を離さないから」
「はっ?!」
「手」
「て?」

ひょい、と檜佐木副隊長が目の高さまで左手を持ち上げる。まだ繋がれたままの手の向こうに、檜佐木副隊長の不適な笑みが見えた。

「お前が俺の手握り締めて離さないから」
「!!」

ぱっと手を離したが、まだにやにや笑いの檜佐木副隊長。さて、そろそろ行かなきゃ遅刻だな、なんて言って立ち上がる。


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