はっとして息を飲んだ。顔を上げると目の前には、見覚えのある顔…。 あの時の、引率者。 心臓が早鐘を打ち、冷たい汗が背中を伝う。 どうしよう。どうすればいい? その時、朝倉さんが私の方を見た。一瞬の沈黙。 でもすぐにその表情は優しく緩んだ。 「…久しぶりだな。元気にしてたか?」 「…は、い…」 「お前のこと覚えてるよ。周りから際立って筋がよかった。その後のこともあったし…まぁ俺は覚えてないんだけどな」 「……」 「大変だったな。でもこうやって死神になれたみたいで安心したよ」 覚えてない…あの後起こったことを、朝倉さんは見ていない。 呼吸がやっと、まともにできた。心臓の鼓動も治まりつつある。 そうだ。朝倉さんが亡くなったとは聞かされていない。ならばこうやって出会ってしまうことも予測できたはずなのに。 怖くてたまらなくなった。あの時のことを知る人がいるかもしれないという事実が。 「なに、お前ら知り合いか?」 「あぁ、まぁちょっと」 阿散井副隊長が不思議そうな顔をして、でも朝倉さんはそれ以上何も言わなかった。阿散井副隊長がまた戦略を話し出したとき、朝倉さんがさりげなく私の近くに来た。 トン、と拳で私の肩を叩いて。俯いていた顔を上げると、朝倉さんは小さな声で言った。 「心配するな。俺は人にベラベラ話す方じゃないから」 そう優しく笑ってくれて、少し安心できた。 「…で、どの隊も大体新人を最初にもってきて、大将は隊長格を当てるのがセオリーだから問題ない。まぁ相手が自分より強そうでも、みんな全力で戦えよ!」 「はい!」 「万葉聞いてるかー?!」 「あ…、はいっ」 |