総隊長は日に一度は必ず会いに来てくれた。
現れる時間帯は夜更けだったり日中だったりとバラバラで、忙しい中時間を見つけて来てくれているのだろうと思った。
総隊長は私をこの屋敷に受け入れてからは今までと打って変わって表情が柔らかくなった。それは家の中だけで見せる表情なのかもしれないが、自分を受け入れてもらえたような錯覚を覚えた。

総隊長は来るたびに短いけれど色々な話をしてくれた。
尸魂界のこと、護廷十三隊のこと、死神のこと…。
私の心はまだ総隊長に気を許すことができなくて、ただ黙って聞いているだけだったけど、その時だけは少しだけ気分が晴れた。
そんな数日間を過ごしているうちに、総隊長が私の眼を見てくれていることに気が付いた。懐かしむような、とてもやさしく、でも時折悲しみが混じったその表情。
まただ。また、私じゃない『何か』を見つめている…。


* * *

一日の大半を、窓辺に置かれた椅子に座って空を眺めて過ごした。
この透き通るような青や、燃えるような赤、輝く黄金色、深く濃い群青を眺めていると、自分も綺麗になれるような気がした。
それはきっと、現実から眼を背けるための逃避だったんだろう。

そんな日を数日過ごしたある日、私は屋敷の使用人に外へ連れ出された。
どこへ行くのかと聞くと、瀞霊廷の中にある研究所とだけ伝えられた。屋敷の使用人や侍女たちは、表面上は丁寧に接してくれていたが、私を見る目は冷たかった。
数日ぶりに外へ出たが、気持ちは晴れなかった。
黒い死覇装の死神たちの中を普通の着物の二人が通るのは目立つため、周囲の目に触れないよう笠を被って歩いた。


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