Nonmelt snow magic



閉ざされた扉。鼻を突く薬品臭。怪しげな煙。軽い爆発音。自分だけの世界。
技局の中ではそれぞれが各々の研究室に篭り、日々実験に勤しむ。研究室はその主にとって「聖域」であり「住み家」でもある。何日も自分の「城」から出ないこともしばしば。

「今はもう冬だったか…?」

季節感なんて皆無。そんな俺の独り言を聞いたあいつは、ぱたぱたと技局を出て行き、てこてことまた勝手に俺の研究室に入ってきた。

「阿近さん」
「…またお前は勝手に入って…なんだ?」
「プレゼントです」

机に置かれたのは大きさの違う2つの雪だるま。恋人同士にしてみました…なんて無邪気に笑うこいつには勝てない。

「…こんなとこに置いといたら溶けちまうだろうが」
「ちゃんと雪が溶けない薬っていうの作って雪に混ぜてあるんで大丈夫です」

そんな薬品をいとも簡単に作ってしまえるこいつも優秀な技術開発局の一員で。こんな怪しい異空間に自ら志願して入ってきた変わり者の女。

真白が技局に入って俺に懐いてきて…俺の世界は色を変えたような気がする。いつも突拍子のない、且つ予測不可能な行動をするお前を、愛おしいと思うようになった。

「阿近さんに冬をお裾分け、です。」

そう言って冷えた手に息を吹きかけるお前が愛おしくて、その手を自分の手で包み込み、それからその細くて小さい体ごと抱きしめてやる。

俺の研究室に入れるのはお前だけ。


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