それもそのはず、現在発売されている伝令神機のデザインはシンプルかつ機能性に特化したものばかり。
色は黒・白・シルバー、形はエッジの利いた四角一辺倒。かわいさのかけらも感じられない。
他に涅隊長がひとりゴリ押しするおどろおどろしいデザインや、使用中に毒入りガスが噴出するなんて代物もあるが、一向に売れていない。

「確かに私だってもっとキラキラ可愛くてゴージャスな神機が欲しいわよ。でもあの変人集団の技局の連中にそんなデザインを再現できるかはねぇ〜…采絵は捕獲専門だから当てになんないし」

松本がため息交じりに言う。そんな諦めムード漂う中、草鹿やちるが声をあげた。

「あたし、かわいい神機持ってるよ!」

草鹿がじゃんっと皆の前に突き出した伝令神機は、本人の髪と同じピンク色の可愛らしいうさぎ型。色とりどりの金平糖を模したストラップまでついている。

「やちる、どうしたのこれ?!」
「技術開発局の子が作ってくれたんだよ!他にもね、この間、ソウルキャンディに味をつけてってお願いしたら、イチゴ味にしてくれたよ!」

草鹿の手から順々に回される神機を手にとって眺める会員たちは顔を輝かせた。
メガネ越しにじっくり細部を確認する伊勢も納得した声を出した。

「確かに可愛いですね。大人向けのデザインもいけるのでしょうか」
「頼むとなんでも作ってくれるよ!」
「一体、誰が?」
「わかんない。取りに行くといつもあっくんが代わりに渡してくれるの」
「あっくん?」
「阿近さんのことでしょ。やちる、あんた技局にまで遊びに行ってるの?」
「阿近さん…」

それまで地蔵のように沈黙していた涅ネムが、松本の言葉に反応し、ぼそりと呟いた。

「ネム、心当たりあるの?」
「阿近さんがかんでいるということは、きっと…」




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