瀞霊廷の目抜き通りに店を構える老舗の甘味屋。連日女性死神で賑わう、人気店である。 本日の女性死神協会臨時会議は、その甘味屋にて行われていた。 副会長である伊勢七緒が重苦しい声を出す。 「もはや聞きあきていらっしゃるとは思いますが、当会は財政難です」 わいわいと賑わう個室で、唯一伊勢の声を聞き取った松本乱菊がきょとんとした顔で聞き返す。 「写真集の売れ行き悪いの?」 「おかげ様で今まで出版してきた写真集は重版分も捌けていますが、新作の撮影が難航しています」 「やちる、朽木隊長の写真は?」 「まだだよ!びゃっくんたらなかなか撮らせてくれないの!」 女性死神協会会長、草鹿やちるは団子を頬張りながら元気よく答えた。 「朽木隊長はじめ、女性人気の高い隊長格の方々の私たちに対する警戒は増すばかり。もはやにっちもさっちもいかない状況です。ここは、写真集に代わる新たな資金源が必要なのです!」 「新たな資金源ねぇ…」 「そこで私が考えたのが!」 松本が手を伸ばした大皿に盛られた団子は、伊勢がテーブルに叩きつけた大きな紙によって覆い隠された。 みたらし餡が染み始めた紙の下から団子の皿を救出しながら、出された紙にでかでか書かれた文字を読み上げる。 「…女性死神協会プロデュース新型伝令神機〜?」 松本が上げた怪訝な声に気付いた他の会員たちも、ようやっと話に加わり出した。 テーブルの一番向こうにいるのに頭ひとつ飛び出して目立つ虎徹勇音が不安そうな声を出す。 「誰がデザインするんですか?」 「もちろん私たちです。デザイン料を売り上げからピンはねするのです」 「製作は?」 「言わずもがな、技術開発局です」 メガネを押し上げながら伊勢が答える。その自信たっぷりな様子に、会員たちは顔を見合わせた。 はちみつレモンティーをすすっていた砕蜂がきっぱりと言う。 「無理だな」 「なぜです!?」 「私たちが考えたデザインを、技術開発局がやすやすと受け入れると思っているのか?」 ぐ、と伊勢は黙り込む。他の者も皆、うんうんと頷いた。 |