薄暗い技術開発局。このぐらいの明度が丁度いい。外は無駄に明るい。

技局員は総じて優秀。当然だ。くそ面倒くさい学科試験をパスして、尚且つ局長が気に入って、俺の審査も通らなければ決して技局には入れない。
半端な奴は門前払い。9割が学科で落ちる。残った1割も、局長がお気に召さない。つまり、ほぼ100%受からない。
おかげで希望者は年々減る一方だった。

しかし今から数ヶ月前。そんな超難関の試験を数十年ぶりにパスした奴がいる。
俺はそいつがその日技局にやってくるまでそのことを知らなかった。
それもそのはず。局長が独断で、そいつの技局入りを許可したのだ。


* * *

「阿近、今日から入った新人だヨ。お前の助手として働いてもらうからネ」

前置きも説明も全てカットして局長は言った。待ってくれよ…聞いてねぇぞ新人なんて。
だいたい俺は助手なんていらねぇんだ。そんなものは目障りなだけだ。

「君、入りなサイ」

俺の心中を一滴も汲み取ってはくれずに、いや端からお構い無しで、局長は俺の研究室にその新人を呼んだ。

「名前は真白ダ。あとは頼んだヨ」
「は?ちょ、局長…」

俺の制止も空しく、局長はいそいそと自分の研究室に消えていった。なんて勝手なんだ…。ただただ呆れる。


「阿近さん」

悶々と不満を感じていた俺の耳に届く声。

「よろしくお願いします」

声の方を振り返る。その時初めて、その新人の顔を見た。


女だ。…いや、それは声で既に分かっていた。見て分かったのは、そいつ…真白は…、

『技局員らしからぬ』容貌、だった。




- 3/4 -
[ *prev | BACK | next# ]

- ナノ -