風邪か…。参ったな…今仕事たまってるのに。風邪と自覚した途端、体のだるさは倍増し寒気までしてきた。

「阿散井副隊長が風邪をひくなんて意外ですね。どこぞの女とヤった後熱くなったまま布団も掛けずに朝まで寝てしまったんですか?」
「ちげーし…お前相変わらずだな…」
「ありがとうございます」

いや、誉めてないんだけど…。極上の黒い笑顔を見せつけられ、さらに熱が上がる。

「なんとかしてくれ〜荻堂…朽木隊長に怒られちまう」
「とりあえず薬が必要ですね」
「薬かー苦手なんだよな…まぁよく効くやつ出してくれよ」
「…あぁ、知らないんですね?」
「何を?」

荻堂はさっきから机上でサラサラとペンを走らせていた紙を、俺に渡した。

「薬は技局から出るんですよ」
「…はぁ?!」
「その処方箋持っていってくださいね」
「ちょ、待て待て!なんで…」
「あ、メガネ三席が近づいて来る。じゃ、僕は逃げますので。お大事に、阿散井副隊長」

今日一番の黒オーラを残し、荻堂はひらりと窓から逃げていった。遠くの方で伊江村さんが叫ぶ声がする。

(待てぇ荻堂―ッ!!)
(何ですか、伊江村三席の湯呑みに毒塗ったくらいで…)
(馬鹿者!危うく死にかけたわッ)
(チッ…致死量を見誤ったか)


診察室にポツンと残されたまま、いつも以上に働かない頭をフル稼働させた。

…薬は技局から出る?技局って、あの技術開発局…?!
ぐらりと、視界が回る。おそらくきっと、風邪のせいだけではないであろう目眩を感じた。



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