「阿近さんあったかいですね…」
「お前が冷たいんだよ…風邪ひいても知らねぇぞ」

クスクスと、俺の腕に囲われたまま真白は笑う。俺なんかのためにこうやって何かしてくれようとするこいつが、何だか堪らなく切なかった。
机に置かれた2つの雪だるま。そっと手を伸ばし、指先で触れてみれば確かに冷たい雪の感触。しかしどんなに触れていても溶けることはない。自分たちの本来の末路を変えられた2人は、何も知らずに寄り添い、笑む。永遠を約束されたこいつらは幸せなのだろうか。
『ずっと2人一緒に』
確約を得た2人は、幸せだろうか。
でも、どうする?心変わりしたら。恋敵が現れたら。相手が、自分が、先に死んだら…。確かな約束なんて、この世に存在するのだろうか。するというのなら、俺はその証拠が欲しい。

「…まだ残ってるのか?その“雪が溶けない薬”」
「はい。これです!」

真白が差し出したビーカーには無色透明の液体が入っていた。

「…車用の不凍液を逆の作用に変えたのか?」

そういった現世の品物は、局長が通販(どんなルートかは知らないが)で大量に買い込み、様々な実験に使っている。

「はい。それにちょっと細工して雪の結晶1つ1つに薬液がコーティングされるようにしてあるんです。雪の結晶の水素結合がとけないようにOH基間を、縛道を応用して結束して。あと市販の不凍液は色付きなので、いろいろいじって無色透明にしました!」

真白はこれだけの説明をサラリと言ってくれた。…肝心なところは1つもわからないが。

「その“いろいろ”ってのは何なんだよ…」
「…よくわからないけど出来ちゃいました」
「………」


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