―技術開発局。

「これにサインと判子。費用は隊費から出るだろうから領収書出しとく。」
「あ、は、はい…」

技局の真ん前まで着ときながら入る勇気がないらしくいつまでもウロウロと中をうかがっていた男。
一応席持ちのくせに情けねぇやつ…。確か九番隊だったか…?檜佐木のやつ、部下の教育がなってねぇぞ。
俺は中からそいつ…名前は確か鈴木、をその情けない姿に半分呆れつつ半分イラつきつつ暫く見ていた。
が、どうやら入ってこられそうにないのでこっちから扉を開けてやった。
鈴木はすでに泣きそうな顔をしていたが、俺を見た瞬間短く叫び遂に溜めていた涙を零した。

…なんだこいつは。子犬か。子犬だな。

「つーか普通義骸作るときは事前に技局来てデータ取らなきゃならねーんだからな。紙切れ一枚で作らせるなんてナメてんのかコラ」
「す、すすみませ…」
「義骸そこにあるから」
「…あの…これ、阿近さんが作ってくれたんですか…?」
「あ?」
「すごい…写真とデータだけでここまで…」

そう。出来上がった子犬鈴木の義骸は『完璧』だった。

肌色、髪色。その質感。微妙に茶が混じった黒い目。筋肉のつき方、指先の爪の形から右鎖骨上にあるほくろに至るまで…。
全て忠実に再現されている。写真と診断書だけでは到底見極められそうもない細部の特徴までも。

「さすが阿近さんですね…」
「言っとくがな、それを作ったのは俺じゃない。銘が違うだろ」
「銘?あ、これですか…?」

うなじと肩甲骨の間の辺りに控えめに押された小さな銘印。解読不能なまでに崩された、芸術的とも言える独特の書体で彫られた製作者の名前。

「…なんて読むんですか?」
「…真白、だ」
「真白…え、女の人ですか?」
「もういいだろ。用が済んだら帰れ」



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