「…真白、悪かった…」
「阿近さんって、本当に、すごい人だったんですね…!」
「え?」

真白はキラキラと金の目を一層輝かせながら続けた。

「局員としてだけでなく、隊士としても優秀だなんて、本当にすごいです…!」

(…おや?)
俺と局員たちの予想を裏切る真白の言動に呆気に取られていると、またもや勢いよく局の扉が開かれた。

「阿近!まだ話は終わっとらんぞ!!お前が男死協に入ると言うまで儂は、」
「阿近さん、男死協に入るんですか?」

ズカズカと入ってくる射場副隊長の言葉を聞いて、真白はさらに目を輝かせた。
真白の姿とこの状況を射場副隊長は素早く判断したようだ。やや気遣わしげな声で真白に声をかけた。

「あんたさんが女死協に入ったいう新しい理事さんか」
「阿近さんの彼女ですよ」

射場副隊長の後ろにいた檜佐木がすかさず言った。お前、本当覚えてろよ。
それを聞いた射場副隊長がニヤリと笑む。

「そうかそうか!そりゃあ好都合!」
「女死協と男死協はいろいろと繋がりあるからね、この前飲み会もしたしねっ」
「なんじゃい儂は呼ばれとらんぞ!」
「若いのだけでやったんですよ」
「俺も聞いてねーけど」

確かに最近、女死協の会合が増えてきたとは思っていたが、まさか飲み会まで。しかも、男死協と…?
平静を装いつつ、内心では激しく動揺する自分で自分が情けない。

「阿近さん、その飲み会の後、荻堂が真白ちゃんいいなって言ってましたよ」
「は?殺すぞあいつ」
「今度また飲み会あるんですけど」
「俺も行く」
「え、どんな飲み会に誘っても滅多に来ない阿近さんが?」
「行く」
「いやーでも理事の飲み会なんで…」

檜佐木と射場副隊長が隠しもせずにニヤついている。わかっている。

「阿近さん、男死協入る気ないんですもんねぇ」
「…入る」
「えっ?」
「入る!!」

安い誘導に乗せられていることはわかっている。
でも、荻堂の話が例え嘘だったとしても、ほかにも危ないやつは山ほどいる。

喜ぶ射場副隊長と檜佐木と、真白。
呆れてぞろぞろと持ち場の暗がりへ引き上げていく局員たち。

本当に、マジで、めんどい…。

結局俺は、技術開発局副局長の立場でありながら、男性死神協会理事と、十二番隊三席という役職を一手に引き受けることになってしまった。

外に出る頻度が格段に上がった。
外を歩けばどこかの誰かから、声をかけられるようになった。
頻繁に飲みに誘われるのを断るのにもうんざりして、結局連れ回される。

なんなんだよ、もう。




* * * *

「阿近、今までだって三席の業務はほぼお前が代行してたヨ」
「えっ」

そうだったのか…?
局長から日々まわってくる業務をひたすらこなすのが日常で、なにが三席業務なのかなんて考えていなかった。

「副局長だって阿近さんしかできないですよ。細かい雑務をミスなくこなすのも、隊長を制御できるのも阿近さんしかいないでしょ」
「そう、なのか?」
「阿近さーん、第五訓練場で戦闘演習の時間だって部下の方々来てますよー」
「あーもう、忘れてた…」
「まぁそういう業務は増えたねぇ」

ニヤニヤと笑う局員たちに混じって、真白もクスクスと笑った。

「阿近さん、最近いきいきしてる」
「お前な…」

真白の頭を軽く小突くと、ますます真白は笑った。何がそんなに面白いんだか。
局の外から、十二番隊員たちの声が響く。

「阿近三席!お願いします!」
「…今行く!」








人生わかんないものだな



And that's all..?
2023.6.17 蓮見ユナ

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