「…次、特設班な。新型伝令神機開発班」

阿近の声音が心なしか和らぐ。資料から顔を上げた目線の先には、緊張から少し肩を強張らせた真白がいる。

「女性死神協会との共同企画だな」
「はい!えと、女性死神のための伝令神機のリデザイン依頼ということで…」
「このアンケート調査はお前が?」
「あ、はい。この調査から分かる通り、女性向けリデザインを望む隊士は非常に多くて…予想売上高も問題ないかと…」
「確かに…いいと思う」

ほっ、と安心したように肩の力が抜ける真白を見て、阿近は微かに口角を上げた。

「女死協に払うデザイン料の交渉は俺も同席するから」
「ありがとうございます!」
「じゃあ特設班に特別枠で予算を…」
「ちょっと待ちなヨ阿近!その予算は私の研究予算から差っ引いた額と同じじゃないか!」
「そんなことはありません」
「大体お前、真白に甘いんじゃないのかネ!?」
「局の利益を第一に考えての予算配当です」
「私の高等な研究にこそ金を使うべきだヨ!皆の意見を聞こうじゃないか!」
「素晴らしい計画ですマユリ様」
「ちょ、いつのまに計画書増し刷りしたんですか。ネムさん、配らないでください」

自身の研究の価値について声高に弁舌を振るうマユリを、はいはい、とあしらいながら電卓を叩く阿近。全く聞く耳を持たない。
技局の予算会議は毎回こんなものだ。こと予算に関しては、局長のマユリですら阿近には逆らえない。マユリもそれをわかってはいるが癪なので、毎度文句をぶちまけるのだ。

「…それより、阿近」

荒ぶりすぎて軽く息を弾ませたマユリが一息ついて、ふと思いついたような言葉に、阿近は面倒くさそうに答える。

「まだゴネるんですか?無い袖は振れませんよ?」
「うるさいヨ!お前、今期から三席だからネ」
「…は?」

会議もほぼ終わっていたので、各々雑談したり菓子を頬張ったりしていたメンバーが一斉に局長と阿近に注目し「はぁぁっ!?」とどよめいた。

「阿近さんが三席!?」
「え、待って阿近さんて今まで何席でしたっけ?七席?」
「の、四人の中のひとりだろ」
「でもこいつ絶対昇格試験受けねーから推測なんだよ」
「そんなのありなの?」
「七席ぐらいなら適当なんだろ」
「それがいきなり三席!?」
「ていうか阿近さんて戦闘イケるんですか?」
「戦わせると結構エグいのよ」
「エグいって何!?強いの!?」
「いや強いんだけどなんていうか…、エグいんだよな」
「あ、この間隊長に無理矢理討伐行かされてましたよね」
「三席から七席まで団体で行ったやつか」
「あれだ、真白が女死協のやつらと出かけるから心配で秒で片付けてきたやつだ」
「あれが昇格試験だヨ」
「あーやっちゃったねー阿近さん。本気出しちゃったねー。…阿近さん?」



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