「あっ、あっくん!やっぱりいたね!」
「何の御用でしょうか、草鹿副隊長」

扉を細く開けた瞬間、中に入り込もうとする草鹿副隊長を膝で押し戻しながら、言葉だけは丁寧な阿近さん。

「今日はね、女性死神協会のお願いがあって来たんだよ!」
「女死協のご依頼は私には承りかねると思いま・す・が!?」

阿近さんの膝を乗り越えて中に入ろうともがく草鹿副隊長の、首根っこをつかんで自分と目線が合うようにつまみ上げ、腕をいっぱいに伸ばしてできるだけ距離をとりながら言う阿近さんに、草鹿副隊長はニパッと微笑んだ。
(この一連の動きは、阿近さんの「ま・す・が」に合わせて目にも止まらぬ早さで行われた。)

「大丈夫!あっくんじゃなくて、いつも可愛いものを作ってくれる子がいるでしょ?」
「阿近さんの研究室にいるって聞いて来たんだけどー?」

ひょい、と室内を覗こうとしている金髪の女性は、確か十番隊の…

「松本副隊長、なにかの間違いだと思いますが」
「でもネムが言うには、ねぇ?」
「…阿近さん、観念してください」
「…ネムさん、どういうつもりですか」

あ、ネムさんもいたんだ…。
中を見ようと首を上下左右に動かす松本副隊長の動きに合わせて、阿近さんも自分の体で室内を隠そうと機敏に動いている。
私はどうしたものかと、書架の陰に隠れて様子をうかがっていた。

どうやら彼女たちは、私のことを探しているらしい。
女性死神協会の依頼と言っていたけど…今までに、会長さんの(たぶん個人的な)ご依頼で、ご希望のものを作ってさしあげたことはあった。
でも、実際に顔を合わせたことはない。いつも人伝の依頼で、受け渡しは阿近さんやリンくんに頼んでいたから。

「皆さん、今のうちに…」
「いてっ、ちょ、ネムさん!」
「でかしたわネム!」

様子からして、ネムさんが阿近さんをどうにかして(たぶん物騒な武器で)取り押さえたらしい。
開いた扉から、草鹿副隊長と松本副隊長がなだれ込んできた。

「あ、真白ちゃん?!」

ぴょん、と私の前に飛んできた草鹿副隊長が私をキラキラの笑顔で見つめた。
まっすぐに、私と目が合った。

「わぁ!かわいい!」

ぴょんぴょんと跳び跳ねながら、「思った通り!」と叫ぶ草鹿副隊長。
松本副隊長も、まじまじと私を見つめて、「あら、本当に美人」と感心したように言った。

私は二人の反応に呆気にとられて、呆然と立ち尽くしていた。
私の目の色を見ているのに。何も言わない。怖がって離れていこうともしない。
そんな風に接してくれる人は、局員以外では初めてだった。


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