君の愛情表現はいつも真っ直ぐで、素直で、僕の態度も言葉も足りないところを君は全て見透かして。僕が与えるべきものの不足分まで君は君の心からの言葉で補ってくれるから。
いつの間にか僕は気持ちを言葉にすることを忘れてしまった。



「あー、あーあー…あいうえおー」

部活を終えて着替えをしていると隣から突然妙な声が聞こえた。

「何してるんですか」

「んー何か声出し辛いんス。風邪かなー」


何度か咳払いをしつつ黄瀬くんは眉を寄せる。

「黄瀬くんはよく喉風邪引きますよね」

「そうなんスよーもうやんなっちゃう」

これまで何度も黄瀬くんは喉風邪を引いていた。その度に青峰くんや緑間くんから静かで良いって言われているわけだけれど。


既に夕陽は姿を消し、暗くなった静かな住宅街を二人並んで帰るのはいつものこと。
黄瀬くんは楽しそうに今日あったことやバスケのことなどを絶えず僕に話してくれる。よくそんなに話していられるものだ、と思う。でも黄瀬くんの嬉しそうな顔を見るのは悪くない。だから黄瀬くんの他愛ない話を聴いているのも割と好きだ。ただ僕はあまり話す方ではないから、素っ気ない相槌や返答しか出来ないけれど。以前黄瀬くんから言われたことがある。一方的に話して申し訳ない、退屈なら聴いてくれなくても良い、と。その時の僕は黄瀬くんの言葉があまりにも心外だった。そんなに興味無さ気な態度だったのかと少し反省して、退屈なわけないと伝えた。それから黄瀬くんはそれまでに増して楽しそうに話すようになったのだ。僕を楽しませてくれようとしているんだということが切々と伝わってきて、そんな彼をいっそう愛おしく思った。黄瀬くんも僕の性格を少し理解したようで、僕が本気でどうでもいいと思っていたら相槌も何もしなくなるだろう、と安心して僕に話をする。


「じゃあ黒子っち、また明日!」

分かれ道で満面の笑みを向ける黄瀬くん。でも僕は知ってる。その笑みの奥に本当は少し寂しさを隠していること。明日も会うのに黄瀬くんはいつも別れ際にそんな笑みを浮かべるのだ。


「黄瀬くん」


今日もこんなに沢山のことを話してくれたから、


「喉、大切にしてくださいね」


紫原くんから貰ったいちごキャンディをあげる。明日声が出なくなって、僕と話し過ぎた所為だと言われたら困るし。彼に限ってそんなことは絶対に無いだろうけれど。

「く、黒子っち、ありがと!大好きっス!」

「知ってます」


いつもみたいに愛を伝えながら抱きついてくる黄瀬くんの頭を軽く撫でて、別れた。





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20120624




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