これと対みたいな。
黒(→)←黄



青峰っちとの1on1を始めてから二週間ほど経った。毎日毎日やってるのに未だに俺は青峰っちに勝てない。


偶然、青峰っちのプレイを見た。バスケに特に興味があったわけでも知識があったわけでもなかったのに、彼は強いと自分の第六感が騒いだ。青峰っちのプレイに一目惚れした。だからバスケ部に入った。青峰っちのプレイをもっともっと近くで見たいと思ったから。

バスケ部に入部してすぐ、他の部員とは違う人達に気付いた。彼らは類い希なる天賦の才を持っており、各々が各々のプレイを確立していた。青峰っちみたいに強い人がこんなに沢山いたんだってわかって、俺のやる気はよりいっそう強くなった。彼らのようなバスケがしたい。彼らと共にバスケが出来るくらい上手くなりたい。その一心でただひたすら練習に打ち込んだ。最初の頃はレギュラーに入るには程遠くて、練習試合も見学状態だった。でも強い彼らのプレイを見ているのは凄く楽しかった。シュートが決まればスカッとするし、彼らの強さに動揺する相手を見れば俺は何もしてないのに物凄い優越感を感じた。それでもやっぱり一番に俺の目を引くのは青峰っちのプレイで、青峰っちが新しい動きを見せる度に個人練習でこっそり真似してみたりして。

だからこそ、気付いてしまったのだ。
青峰っちのプレイを形成する必要不可欠な要素に。

気付いてしまえば早かった。青峰っちを見て真似していれば自ずと答えは見えてきた。青峰っちが試合中に何故このシュートを打てたのか。それはいいところにパスが来たからだ。青峰っちの荒々しいシュートを引き出すあのパスは何だ?

それからは気を付けて試合を見るようになって、強すぎる四人のプレイだけでなく、もう一人の存在に気付けるようになったのだ。
周りに気付かれることなく、素早く回り込んでパスを出す。まるで魔法みたいだった。他の四人と全く異なる彼のプレイに興味が湧いた。そして同時に彼自身にも興味が湧いた。

そのうち俺はレギュラー入りを果たした。まだまだ四人には遠く及ばなかったけど、みんな俺の成長力は認めてくれた。やっとのことで彼らと一緒にバスケが出来るようになって、それだけで舞い上がった。
試合を通して彼らの強さを肌で感じ、バスケの楽しさもわかってきた頃には既に俺は黒子っちに纏わりつくようになっていた。黒子っちはいつも鬱陶しそうにしていたけれど、決して俺を突き放したりしなかった。試合の中で黒子っちのパスを受け取ることも増えて、毎日一緒に帰るくらい俺と黒子っちの距離は近付いてた。
黒子っちに近付きたいと思ったのは黒子っちのことが好きだからだって気付いたのも割とすぐで、黒子っちといる時間が何より幸せに思えるようになった。黒子っちはなかなか読めないから、少しでも黒子っちを知りたくて試合中も黒子っちをよく見るようになったりして。


そうして分かったのはやっぱり黒子っちと青峰っちの二人のバスケのことだった。
黒子っちは青峰っちを光として自らは影に徹し、青峰っちのプレイを際立たせる。そして青峰っちもそんな黒子っちを信頼して思い切りプレイする。息が合いすぎている二人のプレイに憧れた。しかしそれはいつしか憧れではなく羨望へと変わっていた。

青峰っちのプレイに憧れた。青峰っちみたいなプレイをしたかった。最初はただ単純に青峰っちのプレイだけを見てそう思ってたのに、俺は黒子っちと共にプレイ出来る青峰っちを羨むようになった。青峰っちの力を余すことなく引き出す黒子っちと、その黒子っちの役割を十分に活用し、黒子っちのパスを最大限有効にする青峰っち。黒子っちの光は青峰っちしかいないっていつも思い知らされた。

それでも俺は、黒子っちの光になってみたかった。だから青峰っちに1on1を持ち掛けるようになった。青峰っちみたいに、黒子っちに認めて貰いたくて。何度勝負しても青峰っちの強さには限界が無くて、どんどん遠くなっていくから俺は追い付くことに必死。実際には全く追い付いてなんかいない。わかってる。追い付くだけじゃ駄目だってことくらい。越えないと駄目なんだ。わかっていても今の俺には追い付くことしか考えられない。そのくらい実力差がはっきりしているのだ。1on1をして改めて知る、青峰大輝という人間の恐ろしさ。怯んでいる場合じゃない。越えなければ。越えなければ。そうでないと黒子っちは、


俺に見向きもしないだろうから。



足掻いても足掻いても、どこまでも突き放して遠ざかる。どんなに手を伸ばしてもその光を浴びることすら叶わない。光が在ることは知っているのに決して届かない、深海に居るみたいだ。浮上しようとするのに、どこまでも沈んでいく。


そろそろ、水圧が苦しい。





end

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青峰に嫉妬する黄瀬くん。
お互いに両想いなのに考えすぎちゃってる黒黄。

何よりも青峰が不憫←


20120623




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