こっちの世界に来た時のこと?

「覚えてないよ」

そんな昔の事。吐き捨てるように、でもなるだけ丁寧に音にした言葉は空気を滑って千尋に届いたようだった。
嘘、本当は覚えている。結構衝撃だったんだ、千尋が僕の手を引いた瞬間に、硝子の壁が弾けて極彩色の破片が皮膚を裂いて、それでも僕はこの手を離したくないと思った。
何処にも居場所を置けずとも、僕の一番大切なものをこの手の中に残していくから、ねえどうかまた繋いでよ

なんて、言わないけど
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