哉太はどこも透き通っていて熱帯魚みたいだと思う。その雲母の瞳がいつもきらきらと光るのは水をたたえているからだ。外側も内側も綺麗な哉太の中で一番綺麗な瞳が病室にある水槽の魚を静かに追う。

「哉太、私、水になりたいなあ」

白い頬にすらりと涙が流れていくのを私は黙って見ていた。
本当はね、哉太、私ずっと嫉妬していたよ。苦しくても悲しくても綺麗な哉太がずっと羨ましかったよ。
例えばこれを口にしたとして、哉太はどれだけ傷付いても私をきっと許してくれるでしょう。薄氷を踏むような真似をして、どれだけ貴方に皹をいれても溢れる水の純度に私が敵う事は一生ないのでしょう。
それでも私は哉太の水になりたい、貴方がそうやって不変の美しさを教えてくれる代わりに私は貴方が生きる為に必要な何かを与えられたら、どんなに、

「なんでお前が泣いてんだよ、」
「……え?」

ぼたぼたと落ちた涙は雨のように哉太の頬を濡らしていた。哉太は眩しそうに笑いながら両手で私の頬を挟む。

「すっげ、ブサイク」
「哉太のバーカ」
「月子のブス」

額を合わせてクスクスと笑えば、お互いの涙は混じって何処かへ消えていった。
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