名前なんて識別記号でしかなく、身体に合わせて合理的な思考を始めようとするのをいつも感情が許さなかった。血と同時に継承する一族の記憶はまるで自分で見たもののように強烈に焼き付き毎晩、夢に見るのだ。
嫌いだった。ネス、と甘ったれた声で呼び、人の後ろをちょこまかとついて歩き、泣き叫んだりとにかくやかましなくて気に入らなかった。父の、師匠の手を焼かせる幼く無知な存在が今も記憶に残る僕の先祖をどのように思っていたのかも知っている。殺してやろうと思った。必要なら殺せとも言われた。
それが出来なかった。首に宛がった手から確かに伝わる脈動が、温度が、今まで僕をずっと生かしていたのを知ってしまった。

「ネスは私を殺せないよ」

その手はいつも迷わず僕の手を握る。

「あったかいねぇ」

君が許してくれた
臆病な僕に行き場のない僕たちに、此処で呼吸を続けて良いんだと教えてくれたんだ
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -